2015年秋 大阪/国立国際美術館で<金井勝の世界>!

この<金井勝の世界>の企画ですが、2015年の春に、国立国際美術館の客員研究員;大橋勝さんから突然メールが舞い込んできたのが始まりでした。私が撮影を担当した『ヒロシマ1966』(監督:白井更生)と、初期の監督作品;<微笑う銀河系三部作>とを、第10回中之島劇場で公開したいが如何なものかという内容でした!

これらの作品は全て発表してから40年以上経っており、近年の大きな上映イベントは主に海外でしたので、大変に嬉しく思いました。
     
 インパクトのあるポスター  美術館の地上は何と玄関だけ!? 地下1階のフロアー、上映会場もこの階でした
その大橋さんによるチラシには、
「第10回中之島劇場を開催いたします。今回は日本の前衛映画でも特別な存在感を示す金井勝の初期作品と、監督デヴュー以前に撮影で参加した独立プロ作品を上映いたします。(中略)そのころの日本は高度経済成長と闘争の時代、映画はいまだ花形産業でありましたがかげりを帯びてきており、松竹ヌーベルヴァーグをはじめとする新しい映画の動向、また海外からはアンダーグラウンド映画の波が押し寄せて、それに呼応する動きが日本国内でも巻き起こりつつありました。

そんな時代の中で作られた私の『無人列島』(’69)、『Good-bye』(’71)、『王国』(’73)の<微笑う銀河系>三部作~~大橋さんは更に、「これらはその内容と形式において、同時代的にもその後の映画史においても、他に例の見当たらない独自な作品群であり、大きなインパクトを世界に与え続けています。(後略)」~~とあり、大変に有難く思いました:-))))))))))

さてそのプログラムですが、
11月7日(土曜日)・・・ 13時からのAプログラムは『ヒロシマ1966』、 終了後に金井のトーク。 15時からのBプログラムは『無人列島』。
8日(日曜日)・・・ 13時からのCプログラムは『Good-bye』、 終了後に金井のトーク。  15時からのDプログラムは『王国』でした。

上映フイルムは全てフィルムセンター所蔵作品で、私自身フィルムで観るのは久し振りなので緊張しましたが、それより私も白井監督も大阪にはあまり縁がありませんでしたので、果たして観客が集まるのかどうかとても心配でした。
     
 左から大橋さん、私、前任者の森下明彦さん  司会の大橋さんと  熱心に耳を傾けてくれる客席
全て入れ替え制の4プログラム~~天候などの影響もあって一律ではありませんでしたが、多くの方に複数のプログラムを観て頂けましたし、トークにも参加して貰えました!

先ず『ヒロシマ1966』ですが、これまで映像的に話題となってきた場面のひとつに、加藤剛と松本典子とが演じる二人の医師の広島駅ホームでの別れのシーンがあります。
それは広島で被爆者の治療している松本が、加藤を載せて走り去ってゆく列車を見送っているところで、彼女の横顔を列車の窓にそして車体にも映し撮った長回しのショットです!
加藤が向かう先は九州の佐世保~~彼はそこの病院でベトナムの戦場で負傷したアメリカ兵の治療を行っていたのです!

1960年からなんと15年間も続いたベトナム戦争~~その最大の犠牲者はベトナムの人々でしたが、同時にこの無益な戦争で苦しめられたのはアメリカの若者たちでもありました!
やがてアメリカでも学生を中心に反戦運動が高まり、遂に'69年には首都ワシントンDCで歴史的な大反戦集会が巻き起こり全土に広がりました!

また同じ頃フランスでも学生の民主化運動から始まった反体制運動が、労働者を巻き込んで拡大してゼネラルストライキまで発展~~’68年の5月に起こった<パリ五月革命>です!
そんな中でトリュフォーやゴダールなどの監督たちに余りにも商業主義的だと非難を浴び、カンヌ映画祭も糾弾されました!

それらの闘争は、旧世代のマンネリズムに対する新世代の怒りであり、それらは日本の学生運動にも大きな影響を与えましたが、私の処女作;『無人列島』は東大闘争、日大闘争の最中に制作されており、’69年5月にATG新宿文化のレイトショーで封切られ、来日していたフランス人やアメリカ人、そして大学などの映画研究会に高く評価されました:-))))))))))
 ※ 主な上映会リスト
     
 トークにも熱が入る  年配の方には当時の記憶が・・・ 退場者は一人もなく、熱い視線が注がれました 

トークでは、そうした時代背景の中で、如何に世界に類例のない映画作りを目指していたかについて話しました!

観客の中には既に何度か私の作品をご覧になった方もおりまして、素晴らしい状態でのフィルム上映を喜んでくれた人や、作品について質問をしてくれる方々もおりました。
またこの映画イベントと作品の感想文を、ご自分のweb siteに掲載してくれた御仁もあり、充実した上映会を感じました:-)))))))))))

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