かない勝丸プロダクション:作品紹介 
                                  
(金井 勝監督作品)
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Profile of KANAI KATSU:

Born in 1936. Starting out working at the Tokyo movie studios of Daiei, he has been involved in a broad
range of film genres.
His main works as director include: The Deserted Archipelago (1969, Grand prize at the Nyon International
Film Festival), Dream Running (1987, Best short fiction film prize at Melbourne International Film Festival),
Good-Bye (1971), The Kingdom (1973), The Stormy Times (1991), Seinaru-gekijyoo (1998)etc.
Super Documentary:The Avant-Garde Senjutsu (2003, Prize of the FIPRESCI at The 50th International
Short Film Festival Oberhausen).
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無人列島1969年度(35ミリ・16ミリ/55分)
   ~ スイス・ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭:グランプリ (’70年
少年時代からの体験と妄想に、日本の(将来を含めた)戦後史を加えて、瘤だらけの縄のように編上げた作品~~ これは悪夢か、現実か?~~ 真昼の闇を主人公・日出国が突っ走る!

「映像表現のオルタナティヴ」で那田 尚史氏が――!
那田尚史氏の力作・「日本映画の六〇年代と金井勝」

スタッフ

監督・金井 勝
脚本・金井 勝
    山崎佑次
    宮田 雪
撮影・鈴木正美
    佐沢靖朗
美術・山崎佑次
昭明・久保田照和
    末吉忠治
記録・片山雅幸
録音・目黒スタジオ
効果・河内 紀
編集・菊地克広
助監督・宮田雪
     吉田元夫
     山口直郎
スチール・斎藤武三

キャスト

串田和美     河西都子   
大方斐沙子   新井 純 
竹田 都      伊藤満智子 
金平ミサ     佐藤 博    
渡辺ルミ     浅川鮎子  
佐沢 博      真壁勝徳   
久保 昭     
永田 智       松葉正男
上条順次郎    加藤好弘
岩田信市      佐藤重臣 
樋浦 勉       村松克己
坂本長利     青木一子

協力・松本 勲
    佐々木裕二
    渡辺重治

『GOOD-BYE』1971年度作品(16ミリ/52分)
日本人の血の流れを求めて戒厳令下の韓国ロケ決行~~ そこに生じた鮮烈なドラマが、緊張感の中におかしさを滲み出させて、あなたの脳天を撃つ―― !

スタッフ

脚本監督・金井 勝
共同脚本・むささび童子
撮影・亘 真幸
    金井勝 
    山崎佑次 
    富塚良一
音響・岡本光司
美術・山崎佑次
編集・斎藤武三

キャスト

むささび童子   松井康子
梵魚寺勝丸   田中 茂 
空涙犬吉     堤 雅久
大方斐沙子   小笠原清
宝 仙花      雲 堂門
真壁勝徳     亘 真幸
佐藤重臣

『王国』1973年度作品(16ミリ/1時間24分と1時間20分のバージョン)
  
 ~ 雑誌・「映画評論」’73年度ベストテン第9位
全てをからめとってしまう〈時間の神〉に超然と立ち向かう若き詩人・五九勝丸~~ その冒険の旅は八王子から遥かなるガラパゴスへと進み、更にその中天へと駆け昇るのだ―― !とてつもなくキッチュな新しい神話。
『王国』の解説

スタッフ

監督・金井 勝
脚本・金井 勝 
    むささび童子
撮影・亘 真幸 
    吉田耕司
録音・菊地進平
編集・斎藤武三
共同演出・
    斎藤 隆 
    比田義敬
制作主任・
   むささび童子

キャスト

むささび童子  大和屋 竺 
桑名平治    城之内元晴
佐藤重臣    大方斐沙子  
岩田信市    堤 雅久
佐々木 天    山崎佑次,
宮田 雪     尾形充洸
井東 清     斎藤 隆 
山本晰也    比田義敬,
萩野素彦    荻野アヤ  
荻野 直     細井靖明
大阪 徳     秋山 洋
伊藤 文     多胡智惠子  
李 順子     金井 勝  
松本 勲     串田和美

※ 以上《微笑う銀河系》三部作
マックス・テシエの「微笑う銀河系」評  



『夢走る』1987年度作品(16ミリ/17分)
   
~ メルボルン映画祭:最優秀短篇劇映画賞(’88年) ~
時代劇の実験映画。ご隠居の恋文を持って東海道をひた走る若き飛脚・五郎兵衛~~ その五郎兵衛も恋に落ちて、この老若・恋の勝負の結末はいかに……!?

スタッフ

監督・金井 勝
撮影・細井靖明 
    永井弘義
照明・桑名平治
美術・高根浩明
音楽・森 順治 
    高橋修二
録音・鈴木武夫
協力・石井秀人 
    伊藤 修
ネガ編集・亀井編集室

 

キャスト

城之内元晴
高橋孝英
高橋葉子

語り・神田 紅
唄・ 山本由美子




『一本勝負の螽斯(キリギリス)1988年度作品(16ミリ/11分)
400フィート巻きのフィルムを詰めたカメラが家の中をワンショットで巡り、勝丸の日常と妄想とを白日の下に曝け出す個人映画!

スタッフ

作・金井 勝

撮影・細井靖明 
   永井弘義
美術・高根浩明
協力・木村敏明
    岡田秀彦
助監督・河村 孝

 

キャスト

金井 勝

山本由也
会山軽子
森  順治 
高橋修二
森 亜野


『ジョーの詩が聴える』1989年度作品(16ミリ/22分)
   
~ 月刊・「イメージフォーラム」ベストワン’89 = 那田尚史&西嶋憲生の両氏 ~
『夢走る』でご隠居の役を演じた城之内元晴は既に鬼籍の人~~ その彼の作品『新宿ステーション』の詩が庭を這うラストシーは圧巻也!

スタッフ

作・金井勝

撮影・細井靖明 
    永井弘義
美術・高根浩明
協力・木村敏明 
    岡田秀彦
    伊藤良子
    森 理恵
    鈴木扶滋子
助監督・河村 孝

 

キャスト

城之内元晴
亘 真紀
金井 勝

語り・染谷欣吾





      ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

歌・句・詩シネマ
 『時が乱吹く』1991年度作品(16ミリ/1時間2分)
  
~ 雑誌・「シティロード」’91年度ベストテン第2位 ~

№4 短歌篇『夢走る』№5 俳句篇『一本勝負の螽斯』№6 詩篇『ジョーの詩が聴える』に幕間2景を挟んで完成させた、映像詩人・城之内元晴への追悼作品―― しかし、ただの追悼映画ではござんせんぞ !

『時が乱吹く』の解説(那田 尚史)
『時が乱吹く』への応援歌(MONSHIRO)



『聖なる劇場』1998年度作品(video/29分)
舞台づくりと、小鳥や魚、昆虫など、脇役たちのパフォーマンスの瞬間を掴まえるのに長い歳月をかけた作品(この部分はまだまだ進化する)―― やがて、黄泉の国の住人たちがそこに舞い降りてきて、「我を見よや!」と競演を繰り広げるのだ!

スタッフ

作・金井 勝

協力
  細井靖明
  河村 孝


オフィス・エムエイピー  
 

 

キャスト

  大阪 徳
 佐藤重臣
 城之内元晴
 大和屋 竺

魚 野鳥 蝶 蛙 
蛇 蝉 蜥蜴etc.

金井 勝


スーパードキュメンタリー 前衛仙術』2003年度作品(video/33分)
   ~ 第50回オーバーハウゼン国際短篇映画祭:国際批評家連盟賞(’04年) ~
映像作家・金井勝が自分の中に棲む〈別人〉勝丸をドキュメント。前衛仙術なるものを編出した勝丸は次々と奇跡を起こすが、それは決して絵空事ではないミラクル―― 他に類例のない怪作にして快作也!
作品解説 日本語 英語:ENGLISH
MONSHIRO 姫からの応援歌

スタッフ
演出・撮影・音楽・編集:金井 勝
特殊撮影:吉本直聞
協力:(株)オフィスエムエイピー

キャスト
金井勝丸
智女
雉鳩一家
ナオキ

小野塚直美


※ 関連頁  <横顔&自作解題>  英語版<Profile&Commentaries>  
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※ 尚、上記の作品は次の所にも収蔵されています

東京国立近代美術館 フィルムセンター (永久保存) 
        
 『無人列島』
         『GOOD-BYE』
         『王国』
   ◆ 横浜美術館
            
『無人列島』
   ◆ 福岡市総合図書館
      
      『時が乱吹く』
   ◆ 京都造形芸術大学
           
 『ジョーの詩が聴える』

各作品の解説&PR (工事中)

第3作品 『王国』

この『王国』は、〈微笑う銀河系〉三部作の〈天の巻〉として 30年ほど前に制作・公開されました。30年前といえば、訪問者の皆さんのほとんどはまだ生まれていなかったと思いますので、ちょっと触れさせて頂きます。

〈微笑う銀河系〉の第1作『無人列島』(’69)は、ぼくの体験と妄想、それに戦後史を加えて縄のように編み上げた作品で〈人の巻〉。次の『GOOD-BYE』(’71)は、ぼくの遥かなるDNAの謎を究明するために戒厳令下の韓国にロケした作品で「血」から「地」に至る〈地の巻〉。そしてこの『王国』 ―― 他の全ての神は否定できても、唯一否定しえない神が我々を支配しています。それは〈時間という神〉で、これはその〈時間〉への挑戦状、〈新しい神話〉としてつくった〈天の巻〉です。

この三部作では幾つかの共通点を残しましたが、(自己模倣を避けるためにも)内容においても方法論においても大きく異なりますので、その評価も観手によってまちまちで、自分が出合った作品以外は認めようとはしません。(笑い)

IFシネマテーク〈長編実験映画の快楽〉では、一昨年は『無人列島』を、昨年は『GOOD-BYE』を上映しましたが、そういったわけで、それらを観て頂いた方々にこの『王国』がどう映るのか楽しみでもあり不安でもあります。(笑い)

ともあれ、この『王国』にのってくれた方々は、
詩人・
吉増剛造氏=「八王子にあった「王国」の入口」(映画芸術・「朝の手紙」小沢書店)大和屋竺氏=「日本読書新聞:今年の収穫 ベスト3」の第1位。山田宏一氏=「朝日新聞’73回顧 ベスト5」の第2位。他に「映画評論」ベスト10の第9位などがあります。
また
マックス・テシエ(評論家)もフランスの映画雑誌「 ECRAN」などで大絶賛 ―― 彼は『王国』をカンヌ映画祭に持ち込んで、自ら同時通訳をしたほどの力の入れようでした。感謝!

ECRAN 73 №20

その後の『王国』ですが、松井良彦氏の『追悼のざわめき』や、井土紀州氏の『百年の絶唱』などにも影響を与えていることが判りました。(※ 紀州氏の原稿は「アンダーグラウンド・フィルム・アーカイブス」(河出書房新社))
何分昔の作品ですので、お見逃しの方は是非この機会にご高覧下さい――!


第7作品 『時が乱吹く』

■ MONSHIRO 姫からの応援歌

乱吹く実験人生、勝丸ここに在り 

                          MONSHIRO                                                        

年を重ねると、人は説教をたれたり達観を語ったり孤独になったりする傾向があると思う。でも、なんなんだ、この金井 勝丸って人は。「時が乱吹く」を観て私が一番に思った事、それは「なんて自由で優雅で軽いんだ!!」だった。
年を重ねて、さらに洗練されて、肩の力を抜いて、すらりすらりとどの年代の観客の脳の中にも舞い込んでくる。「時が乱吹く」はそんな作品だった。カッコよすぎないか??

白状してしまうと、私は実験映画というのが苦手だ。
「俺の内臓、みせるぞー!!これが俺の生きざまだ!!」みたいなのが、あまりにも多い。観客、相手との距離のとりかたが乱暴なのだ。そういうのは自己表現という名の捌け口でしかないと私は思う。

ところで金井作品の「時が乱吹く」。この作品は、イマジネーション豊かな作家の余裕に、しみじみと浸れる。素直に映画に惹き込まれる。
実験性がありながら、作品として緻密で端正。手作りっぽさと洗練という相反するようなものがバランスよく共存している。そして、ユーモアとエレガンス。私は「時が乱吹く」の中でも、金井 勝のこの感性が好きだ。これらは作品を愛おしんで作っている姿勢の現れだと思う。実験映画は作品。作品だったら愛おしんで作ってほしい。そんな大前提を思い出させてくれた。そんなものをふまえて、金井作品は完全なオリジナリティを持って、飛脚は観客の残像の中にまで駆け込んでくる!

私は「時が乱吹く」を観て、涙が出る程笑い、一生忘れないであろう、愛おしくも奇妙をな名場面を数十は観た。形容できない感覚を数十は感じた。

15才から寺山キッズの私も、映画作家としては勝丸の方が一枚上手だな、とまで思った。これがいかに寺山キッズとして口に出し辛いかは、想像に難しく無いと思うのだが……。ああ、寺山のお父ちゃんよ。ごめんよ。おいらは「時が乱吹く」に惚れちまったのさ……。

実験人生、金井 勝丸は完全にオリジナルな我が道を飛脚のごとく舞い進み、年を重ね、さらに軽くなり、一輪車を乗るがごとく身軽に観客の感性に滑り込み、無駄なものを振り払い、可憐な感覚を身にまとい、練磨のバランス感覚を身につけて、研磨の完成度を肌にして、これからもだれよりも無邪気に生きるであろうな……
もう、みんな、見るしかないでしょう、「時が乱吹く」!!


第9作品 『スーパードキュメンタリー 前衛仙術』
~ 作品解説 ~

☆ 制作意図:
これは作者の金井勝が、自分の中に棲む別人・金井勝丸の日常と妄想とをドキュメントしたものだが、若者たちへの、そして若かりし頃の自分への挑戦状でもある。

☆ 粗筋:
東京の郊外に住む勝丸は67歳―― 体力、気力そして記憶力の衰えを感じているのだが「老人は若い時の付録のような存在であってはならない」と、4年前からパソコンを始めている。
ホームページを開設し、ビデオ編集なども出来るようになったが、しかし若者のようなわけにはいかない。そこでその〈若さ〉に打ち克つためには何か術のようなものが必要だと考え、古の仙人たちが修業したという仙術を学ぶ。その仙術に合気道の精神と技とを加え、更に妄想力と形而上学とを振りかけて21世紀に適応する〈前衛仙術〉なるものを編上げるのだ。
具体的にいうと、修業を重ねて気力を高め、その〈気〉を対象物に吹き込むという技が基本で、その修業の場は近くにあるお寺の裏山である。その寺・高幡不動尊金剛寺は真言宗で、真言宗の開祖は中国から密教をもたらした空海―― 古の書物にはその空海のような僧が仙人だと記されている。
やはり修業の場所が良かったのだろ、ある日奇跡が起こった!勝丸は修業の帰り道で可愛らしい人形を拾うが、これも何かの縁だと〈気〉を吹き込んでみる。するとその人形に良く似たにょしょう・智女(=TOMOJYO)が現れ、30歳の歳の差を超えて2人は結婚―― これを〈前衛仙術〉による奇跡といわずして、他に何といえるのだろうか!
(笑)
勝丸は「前衛仙術には身のまわりの環境も大切だ」と庭を整え、植物たちと〈気の交換〉をしたり、雉鳩(繁殖期には山に帰るので山鳩ともいう)を呼び寄せたりもする。その雉鳩だが、近所には天敵の猫たちも沢山いるし危険がいっぱい―― が、心配ご無用、会得した術によって鳩は無事に産卵、彼は子鳩たちの成長を目の前に展開させて、自然界の神秘と一体化するのだ。
更に勝丸は、寒がりな智女のために北風除けの壁を造り、遂には仙術の中の仙術である空中飛行まで行うのであるから、若者たちよ、とくと御覧あれ!
(笑)

Super Documentary:The Avant-Garde Senjutsu
     By Kanai Katsu / 2003 / Japan / Video / Color / 33 min
    Prize of the FIPRESCI at The 50th International Short Film Festival Oberhausen

Visual artist Kanai Katsu documents the delusions and the everyday of his alter ego, Kanai Katsumaru. The film is a challenge addressed to the young generation and also to himself as a young man.

Synopsis:
  Katsumaru lives in the suburbs of Tokyo. He is 67 years old. He’s beginning to feel his physical and mental health, as well as his memory, deteriorating. Nevertheless, he’s started to use a personal computer four years ago, proclaiming that “Old age should not be a mere appendix to the youthful years.”
   Though he has started a website and learned how to edit video with his computer, there is no way he can compete with young people in this field. There must be some kind of an art to win over “youth”. He decides to study the ancient art of the legendary wizards. Adding the spirit and techniques of the martial arts Aiki, together with the power of delusions and metaphysics, he concocts an “Avant-Garde Senjutsu,” supernatural powers perfectly suited for the 21st century.
  The basics of this art run specifically like this: Through constant training your energy level rises. Then you blow this vigor into an object, giving it life. The training place for the senjutsu is the open grounds of a mountain temple nearby. This Shingon sect temple is said to have been founded by Kookai, who brought esoteric Buddhism over from China. Ancient documents claim that there was once a monk like Kookai who was a legendary wizard.
  Blessed with a lucky training ground perhaps, one day a miracle occurs! Katsumaru finds a cute doll on his way home from training, and sensing a certain karma, blows his “qi,” or vigor into it. Tomojyo, a woman who resembles the doll suddenly appears. The two wed, overcoming a thirty-year age difference. If this is not a miracle caused by Avant-garde senjutsu, what is?!
  Katsumaru believes that the environment is very important for Avant-garde senjutsu. He takes care of his garden, exchanges “qi” with the plants, and converses with turtledoves (also known as mountain pigeon since it returns to the mountains during mating season). The turtledoves live in a dangerous world, with many cats?their natural enemy?roaming around. But thanks to newly acquired senjutsu skills, the turtledove safely lays its eggs. Katsumaru becomes One with the mythology of Nature, as he watches the growth of the baby doves from birth.
  Katsumaru builds a wall to block out the chilly north wind for Tomojyo, who has circulation problems. He accomplishes the art of arts--flying. Young people, I dare you to follow!

KANAI Katsu:
Born in 1936. Starting out working at the Tokyo movie studios of Daiei, he has been involved in a broad range of film genres. His main works as director include: The Desert Archipelago (1969, Grand prize at the Nyon International Film Festival), Dream Running (1987, Best short fiction film at Melbourne International Film Festival), Good-Bye (1971), The Kingdom (1973), The Stormy Time (1991).


MONSHIRO姫からの応援歌

      伝説の新作「スーパードキュメンタリー前衛仙術」を観て
MONSHIRO

 5月5日、こどもの日、金井監督の待望の新作「スーパードキュメンタリー前衛仙術」を観る事が出来た。イメージフォーラムフェスティバルのプログラムのひとつという事で、他の作家の作品も観ることが出来たが、ほんの数年のうちに実験映画がえらく垢抜けて洗練されていたのに驚かされつつ、あまりにも器用に作られた作品には、なにか薄味で物足りなさを感じてしまったのも事実だ。
 金井監督の作品は人の心を掴む。そして動かす。そして揺さぶる。乱暴な事や驚かすような事をしなくても、地元で、自宅で、数人の出演者で作った映画で、それが出来てしまう。笑いと余裕を見せながらそういった作品を作ってしまう金井監督は実験精神に溢れる職人であり玄人なのだろう。いや、そうでないと、ああいった作品は撮れるまい。

私がタイトルにつけた「伝説の新作」というのは妙な言葉かもしれない。新作が時間を経て伝説になっていくのが筋だが、金井監督の新作が出来る、と知らされた時から私は「ああ、また伝説が観られる」と、納得していたのだ。伝説の作品が撮れるというのは、努力や制作費とは別の次元の事で、名作を撮れる監督は多いが伝説の作品を撮れる監督というのは、本当に一握りしかいないと思う。その違いは「才能」と言ってしまえば簡単だが、少し違う。「格」というのもいいかもしれないが、やはりしっくりこない。「運命」ならいいかもしれない。
 金井監督は、昔から、いや生まれた時から、伝説の映画を撮る運命にあった人のひとりだろう。それが幸福な事かどうかは解らないが、そういう運命の元にある事は作品を観るたびに確信を増すばかりだ。

本作で特筆したいのは智女、智子夫人の登場だろう。金井監督に憧れていた彼女が妻となり映画に出演するまでの時間の不思議な経過に驚かされつつ、また、画面からひしひしと夫婦愛が伝わってくる。創作するという喜びも、家族や友人の支えも、本当に深い悲しみや別れを癒しきれない事態というのがある。
 金井監督の作品は大ホールで上映されたり、動員人数が記録されたりする映画ではない。けれども、私たちをふたたび励まし生かしていくのは、こういった小さく暖かい本当のもの、食事を共にする妻、友人からの優しい言葉、やっかいだと思っていたけれど替わりはない親、けなげな庭の草木、金井監督の作品などを天から受け取る事ではないだろうか?

 年をとる事は止められる事ではない。それを憂いて悲しむより、勝丸のように、仙術をためしてみてはどうだろう?空を飛んでみてはどうだろう?将来、来るかもしれない不安や別れを考えればきりがない。しかし、今ここにある小物で、自宅で、妻やその友人たちで、自分の人生の一部を、イメージを、映像の中に封印してしまおう。それが観客を笑わせ、感動させ、励ますことが出来るなんてすごいじゃないか、なあ、勝丸。人生はなかなかいいものじゃないか。そんな事はもうとっくに知っているよと笑われるかもしれないが、年をとったなんて言わずに、もっともっと映画を撮っていっておくれよ。金井監督が映画を撮ること、それがもう既に仙術なのだから。



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