イメージフォーラム付属映像研究所 ☆受賞者発表の頁へ
           第26期卒業制作展


毎年恒例、イメージフォーラム付属映像研究所の1年間の成果を披露する卒業制作展。
映像作家としての第1歩を踏み出した64の視点は新しいパラダイムを開拓する事ができるか?

プログラムA
極東のマンション    真利子哲也/8ミリ/34分
クラッピン    田村絋海/8ミリ/8分
コスモス    鎌田綾/8ミリ/15分
彼女はテーブルの上    小川良子/8ミリ/5分
因果の手    門脇健路/8ミリ/15分

プログラムB
Marilyn    平林紫乃   /ビデオ/60分
再会望む    千葉三玲/8ミリ/3分
畳の上で死ね    イシハラナホ/8ミリ/3分
かえりなさい あしもとに    金城良太/8ミリ/5分
法(ダルマ)    津久井陽子/8ミリ/3分
OTTOKO    森山可奈子/8ミリ/7分

プログラムC
私の還る家    山口洋佑/ビデオ/30分
いつのことだか    関根彬/ビデオ/8分
自慰シキ過剰    堂垣内秀昭/ビデオ/10分
追いかけられている    小山飛鳥/ビデオ/10分
Happiness もしくは Harness    安田薫/ビデオ/10分
まって、    吉村真弓/ビデオ/10分

プログラムD
振子と存在の証明    今井知美/ビデオ/20分
UNITY    松岡大輔/ビデオ/20分
ふつうのはなし    藤本愛/ビデオ/8分
フルフェイス家族    大石勝敏/ビデオ/20分
キリカブジミィ    新籾真利子/8ミリ/3分
見られたい日記    岡田麻里子/8ミリ/12分

プログラムE
よるの液    オオキアミ/8ミリ/3分
SENRIKO    仲宗根智佳/8ミリ/3分
静かなる日々    鈴木英之/8ミリ/5分
アカシ    吉津典子/8ミリ/10分
九十九里浜の女    岩澤実穂/8ミリ/8分
    植村優哉/ビデオ/6分
人たちきらい    鈴木野々歩/ビデオ/40分

プログラムF
新世界    カトウエイキ/8ミリ/15分
ホル    高木泰宏/8ミリ/20分
血    黒田将平/8ミリ/8分
振り子    佐藤紀子/8ミリ/3分
POP COLOR    渡部あみ/8ミリ/17分
環状軌道周期60    井樋幸子/8ミリ/10分

プログラムG
OR-ZE-RO    落合守征/ビデオ/10分
忘れな草'03    池田那緒美/ビデオ/15分
BU    羽村紀恵/ビデオ/3分
太陽なる母    木村理恵/8ミリ/2分
青き壁 燃えさかる春    今村秀也/8ミリ/15分
蟲おこし    池田聖子/8ミリ/17分
世界は私の体内である    後田彩乃/8ミリ/13分

プログラムH
うきばしキャメラマン    黒小恭介/8ミリ/20分
20022003    天野正洸/8ミリ/4分
ヤンさんの肋骨    伊藤信子/8ミリ/10分
ひきだし    高田茜/8ミリ/5分
影籠 kagero    斉須理恵/8ミリ/7分
夢落ちる    長野日名子/8ミリ/10分
The Miracle    村岡由梨/16ミリ/20分

プログラムI
オヤジ爆破!    伊藤英洋/8ミリ/15分
Nibbio     中村美由紀/8ミリ/15分
深風    児玉寛弘/8ミリ/15分
外道の顛末    渡辺賢一/ビデオ/20分
私からイリヤから    池田正雄/8ミリ/15分
暖・カイソウ    佐川桂代/8ミリ/12分

プログラムJ
tzetze    武田晋助/16ミリ/7分
あ〜ああ、あ〜あ    中村功、林賢吾/8ミリ/30分
音の無いメトロノーム    岸本成悟/8ミリ/5分
抽出のカルパッチョ    専科共同制作/16ミリ/40分

プログラムK
東京豆腐    宗田英立大/ビデオ/35分
種子だんご    まんまさちこ/8ミリ/15分
魚たちの遊泳法    吉田正人/8ミリ/4分
太陽帰線    野本洋介/16ミリ/30分


3/14  5:00 F  7:00 D
3/15  1:00 C  3:00  5:00 B 7:00 J
3/16  1:00 H  3:00 A  5:00 K 7:00 G
3/17  7:00 E
3/18  7:00 D
3/19  7:00 I
3/20  7:00 A
3/21  3:00 E  5:00 H  7:00 B
3/22  3:00 F  5:00 K  7:00 G
3/23  1:00 J  3:00 C

受付(入替なし)  当日900円/会員600円

シアター・イメージフォーラムシネマテーク
渋谷区渋谷2−10−2 電話:03−5766−0116

交通:

(1)渋谷駅から徒歩5分 
   宮益坂上がり右手入る


(2)営団地下鉄表参道より
   徒歩7分―青山通り
   渋谷方向、宮益坂上
   手前左に入る

    26期卒業制作展受賞者発表!

第26期卒業制作展は本科と専科を合わせて11プログラム62本 ―― 上映終了後に専任講師の奥山順市、金井勝、かわなか のぶひろ、鈴木志郎康、西嶋憲生、萩原朔美、村山匡一郎、中島崇、池田裕之によって審査が行われ――、
最優秀賞村岡由梨の「The Miracle」 優秀賞真利子哲也「極東のマンション」 門脇健路「因果の手」、大石勝敏「フルフェイス家族」、 武田晋助(専科)「tzetze」
今年は他に2つの賞が加えられ、高木泰宏作品「ホル」、渡辺賢一作品「外道の顛末」、そして自作の「ふつうのはなし」で好演した藤本 愛に女優賞助手をしながら力作「ひとたちきらい」を作った鈴木野々歩に特別助手賞が贈られました。

秋山祐徳太子氏制作の
ブリキの彫刻
村山匡一郎さんからトロフィーを受取る
大賞の村岡由梨さん

受賞者たち
左から鈴木・武田・村岡・門脇・真利子・大石・藤本さん

第26期卒業制作展から早や2ヶ月が過ぎて、今更〈講評〉というのも変ですし、それにかわなか のぶひろさんがその恐るべき筆力で書き上げた〈全講評〉が既に鈴木志郎康さんのHPに掲載されております。
しかしこの〈映像万華〉でも毎年取り上げてきたので〈今年はパス〉という訳にはいきません。そこで2ヶ月経った今、それらの映像がぼくの脳細胞にどのような〈痕跡を残したか〉 ―― という観点から受賞作を中心に触れてみたいと思います。

村岡由梨 「The Miracle」(16mm、20分)
その幻想的な映像の美しさに先ずは圧倒されました。更にシーンやカットの転換の鮮やかさに心を奪われました。そのあたりのことはかわなかさんの〈全講評〉の中にあるのでここでは省略致します。
IFの授業はゼミではありませんので、〈巡り合わせ〉というものがでてきます。残念ながらぼくはこの「The Miracle」の〈プラン講評〉にも〈中間講評〉にも〈完成講評〉にも立ち会っておりません。否、秋の〈16mm講座〉を含めて村岡とは全くといってよいほど縁がありませんでした。
そこで驚かされたのはたった数日間の〈16mm講座〉だけで、どうしてあのような適正な露出やシャープなフォーカスが可能だったかということでした 〜〜 彼女の〈美〉に対するもって生まれた才能としか考えられませんが ……!
さて、作品の内容の方ですが、作者のコメントには「〜〜 死んだ小鳥を自分の手の中に生き返らせること、時間という存在を自分の手で殺すことを目的に今回の作品を創りました」とあります。飼っていた小鳥が死に、その復活の儀式 〜〜 のようなのですが、その制作過程と無縁だった為か、ぼくにはその耽美的な魅力に隠されて、作品の〈核〉が朧気な記憶としか残りませんでした。
観手の一人ひとり違うかと思いますが、ぼくの場合には〈核〉が見えて、それに絡んだ〈展開〉でなければ観ている時には圧倒されても〈時間〉とともに映像が薄れてきます。「時間という存在を自分の手で殺す 〜〜」といっても、〈KRONOS=時間の神〉はいろんな意味で強敵 ―― その辺りのことも含めて更に上を目指してもらいたいと思います。

真利子哲也 「極東のマンション」 (8mm、34分)
これは、作者が何としても〈映像作家〉になろうと決行した命がけのパフォーマンス・シネマ ―― 先ず古アパートの表が映し出され、そこにひとりで住む彼が
(コマ撮りで)何度も出入りを繰返すと、やがてカメラはアパートの向かいに聳え立つ新築マンションへとコマ撮りパンで繋ぎます。そしてそのひとつづきの流れの中で3階のベランダに本人が現れました 〜〜 この撮影はなかなか大変なのですが良く計算されておりました。
次のシーンはその室内で、赤道儀にカメラを載せたこれまたコマ撮りパン ―― やがてカンボジャで撮った裸足だったり、全裸だったりのパフォーマンスの映像となり、それを家族に観せて、母親から酷評を浴びせられます。が、それは計算上のことで「ぼくはぼくをこわさなくちゃいけない」と考えている彼は、次のシーンで自分を象った粘土像をバットで殴り壊し、更に屋上に出て手摺の上を長い時間歩き続けるのでした 〜〜 後で命綱がついていることを分らせますが、高度恐怖症のぼくには本当に恐ろしいシーンでした。
(笑)
ともあれ、
〈核〉が見えての〈展開〉ですから、この作品はかなり細部まではっきりと憶えております。

門脇健路 「因果の手」(8mm、15分)
映画は〈時間の芸術〉といわれ、流れるフィルムの〈時間〉の中でモンタージュも成立しているのですが、何と作者は〈空間〉のモンタージュに挑戦したのです――!
その〈空間〉のモンタージュの仕掛けは〈立方体〉―― その各面を駆使してのモンタージュでそこに展開する映像は時代劇でありました。勿論この作品は15分という時間の中で成り立っているので、正確には〈時間〉と〈空間〉のモンタージュというべきなのでしょうが、これはかつてない発想 ―― 作者も「タイトルを〈劇箱〈GEKIBAKO〉〉に変えたくなった」といっています。
その時代劇ですが、鶴屋南北の忠臣蔵外伝「盟三五大切」からとったようです 〜〜 が、〈中間講評〉の時点では、作者自身が緊張すると手が震える癖があって、それは祖先が辻斬りに遭って斬られたからだという妄想でした。ぼくにはそちらの方が良かったと思えるし、またそれも彼自身が主人公として出演すべき作品だったと思います。
ともあれ、〈劇箱〉を巧みに使ったその技術と着想に舌を巻きました。

大石勝敏 「フルフェイス家族」(video、20分)
作者の主人公が熊本の郷里に帰省すると、駅に迎えに来ていた家族(父母と妹)は全員フルフェイスのヘルメットを被っていて、嫌がる作者も強引に被せられてしまいます。
この家族は家の中でもフルフェイス着用 〜〜 入浴時もヘルメットを着けており、食事の時も一口分のご飯をかきこむと素早く閉めてしまいます。そして母は父のヘルメットを愛しげに磨きだします!
その徹底振りは半端でありません ―― 飼い犬にはお椀のヘルメット、父親は村の忘年会にもフルフェイス姿 ―― 驚かされたことに、他の村人たちも誰一人として〈撮影現場〉を感じさせるような仕草はしていません。兎も角、出演者全員が徹底して生真面目にやっているから、とてつもなく可笑しいのです ――!
抵抗し続けていた主人公も遂に降参してフルフェイス姿 〜〜 やがて彼は外人を捕まえてヘルメットを付けさせてしまいます。
これはナンセンスといばナンセンス映画ですが、やはりヘルメットは危険からの〈防御〉の道具ですので、そこに作者の意図を超えて作品の〈奥の深さ〉が滲み出てきます。現に卒展の期間中にイラク戦争勃発、今はSARS、そして何時ノドンやテポドンが 〜〜 危険がいっぱいの中に私たちはいるのです。
家族というと〈その不幸〉が大流行ですが、この大石家のようなユーモラスな一家がまだこの日本にあったということ ―― で、ほっとしました。

武田晋助(専科)「tzetze」 (16mm、7分)
人家の灯りが点在する俯瞰のパン 〜〜 やがてひっそりとした住宅地の公園となります。
その公園のブランコに青年Aが座っていると、隣に青年Bが現れて不可思議な動きをし始め、更に一匹のツェツェ蝿(チョッと大きく作ってあるので蝉のように見えた)が出現して大慌てとなります。
場面は変わって、青年Aが帰宅すると頼んでもいない小包が届いており、そこにはツェツェ蝿が 〜〜 といった展開だったと思います。(この作品は専科のJプログラムでしたが、その作者のコメント用紙も、ぼくのメモ用紙も見つかりませんので記憶だけで書いています)
その展開はさておくとして、公園での撮影技術には驚かされました。何とダブルロール撮影とバルブ撮影とを1つ画面で行っていたのです ――!
ダブルロール撮影とは画面の半分を(露光しないように)黒紙などで覆ってその反対側だけを撮影し、捲き戻してから黒紙で逆側を覆って撮影する方法で、一人二役などの場合によく使われてきた技法です。一方バルブ撮影は1コマを一定の時間(5秒なら5秒)をかけてコマ撮りのように撮影する技法で、〈構造映画〉などでは珍しくはありません。
が、この「tzetze」ではその2つの技法を1つの画面でやっているのだから凄いのです。右半分の画像はノーマル撮影で青年Aの動きは普通ですが、左半分はバルブ撮影なので青年Bの首が激しく左右に揺れ(顔の)輪郭さえ定かではありません。
こういった画面を成功させるのは頗る大変 ―― 先ず風のない夜を選ぶ
(=バルブ撮影は露光時間が長いので)。次に被写体の選択(=体は微動だにせず、首だけを長時間振り続ける=青年は体操部の後輩とか)。そして作者の強かな計算(=左右の画面の時間の計算、繋ぎ目の問題など) ―― これらの条件を充たしたからこそ、かつて観たことのないあの映像が可能となったというわけです。

鈴木野々歩 「ひとたちきらい」(video、60分)
特別助手賞を受賞した鈴木はその作品でも頗る頑張っています。カメラを前に「映画を撮っている時は、やりたいことをやっていても世の中の秩序の中におさまるから解放される〜〜」と語り、全裸になったりして様々な〈奇行〉を演じます。
やがてコマ撮りで室内を巡ったカメラは路上に下りて風の中を進むと、小学校 ―― 「ひとたちきらい」の基となったのは、小学生の時の〈苛めに関する出来事〉で、それがトラウマとなったということが分ります。
更に彼は、カメラの中(特殊撮影)に入り込んだりして、〈解放〉を勝ち取る為の様々な格闘 〜〜 しかしその展開を故意に複雑化させているのが難点。

高木泰宏 「ホル」(8mm、20分)
これは女優賞受賞の藤本愛が出演した作品の1つで、陸橋の上を歩いてきた少女(藤本)が、降り積った雪を蹴るトップシーンは秀逸でした。
自分の名前さえ忘れてしまった少女の1日を妄想的に描いた作品でしたが、作者・高木の映像に対する感覚は非凡 ―― 特に光線の捉え方などに感心しました。が、ナレーションと、数字と時計を使った展開がいま一歩でした。

他には、吉村真弓 「まって」オオキアミ 「夜の液」関根 彬 「いつのことだか」岩澤実穂 「九十九里の女」鎌田 彩 「こすもす」斉須理恵 「影籠 kagero」岡田麻里子 「見られたい日記」中村 功&林 賢吾 「あ〜ああ、あ〜あ」渡辺賢一 「外道の顛末」渡部あみ 「POP COLOP」などが印象に残りました。

ともあれ、今年も1年間で〈凄い作品〉が沢山誕生しました。その1年間ですが、Aクラスは夜間授業で週に2日、更にその他のクラスは週に1回だけなので驚きです ―― やはり〈やる気〉のある人たちが集まってくるから凄いのですね。
しかし、本当の勝負は卒業してからですので、26期の皆さん、更に頑張って下さい ―― !!



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