イメージフォーラム付属映像研究所
第28期卒業制作展
2005/3/12〜20多くの映像作家を輩出したIF付属映像研究所の卒業制作展。
1年を通して築かれたイメージがスクリーンに鮮やかな像を結ぶ。
「映像の呼吸」を獲得しつつある46の新作をご堪能あれ!
※受賞作品発表 ※選抜作品集展
つき・よみ
〜 上映作品 〜
A プログラム
ANOTHER TEMPERATURE 渡邊智史/ビデオ/10分
振り返るまで 愛川佳志/8ミリ/5分
融解点 岩渕悠/ビデオ/3分
ソレデイテ アワキ ヒ 菊池文人/8ミリ/5分
極力最優先 箕輪潤/ビデオ/7分
口の無い太陽は8を描く 土屋周一/ビデオ/20分
平面の歌 谷本理/ビデオ/9分
fragment 田辺沙織/ビデオ/15分
鼻の日 和田淳/ビデオ/8分
B プログラム
From Voice 前田真吾/ビデオ/8分
東京ぽっかり 山澤立樹/ビデオ/5分
どんぶら目(まなこ) 田島孝通/8ミリ/5分
まぶた 橋本樹/8ミリ/5分
断頭台 高田道子/8ミリ/20分
BP 芹澤慧/ビデオ/10分
静謐の檻 來住めぐみ/ビデオ/8分
凍える月 最勝健太郎/ビデオ/25分
C プログラム
スミカ 塚原健太/8ミリ/10分
双 河原夏子/8ミリ/6分
ムウジュ 小嶋朝子/8ミリ/9分
ハナノユメ 石橋あいこ/ビデオ/2分
いれてッ! 佐々木友紀/ビデオ/20分
視線 斉藤みどり/8ミリ/4分
連続写真 村田雄一/ビデオ/8分
巨像恐怖症 鹿又紀恵/ビデオ/14分
旅人の視る夢 石垣友子/8ミリ/11分
D プログラム
ヒトクチPlease 鈴木美緒/8ミリ/8分
CREVASSE 野村雅夫/ビデオ/30分
凸凹 白山恵子/8ミリ/10分
レーモンとルフェーヴル 西剛/8ミリ/11分
克己!クローンソルジャー 丸山耕司/8ミリ/20分
View View's 八木晶/ビデオ/13分
E プログラム
breathe 山川環/16ミリ/10分
みにくさ 関川豪/8ミリ/3分
もやっとちゃん 安村美恵子/ビデオ/3分
あまい果実のかおり 橘由美子/8ミリ/4分
私が選んだ父 国井智美/ビデオ/40分
鼠 岡崎潤/ビデオ/15分
カメラ 山田泰士/ビデオ/10分
F プログラム
光の記憶 三輪浩光/16ミリ/7分
ノッポンのダメだし 山本武/ビデオ/15分
little circus 小坂由布紀/ビデオ/8分
緋色の傷口 岡部奏/ビデオ/8分
slide002 ひらたたかひろ/ビデオ/5分
delay ひらたたかひろ/ビデオ/5分
つき・よみ ヤジマチ サト士 三輪 浩光 山本 武
刈込 静子 岡部 奏 /16ミリ/16分
3/12 3/13 3/19 3/20 1:00 F
B
3:00 E
D
A
E
5:00 B
A
C
7:00 C
F
D
受付(入替なし)
当日900円/会員600円
詳細はイメージフォーラムHP
かわなかさんの話を傾聴する卒業生たち 例年どおり、卒展最終日に奥山順市、金井 勝、かわなかのぶひろ、鈴木志郎康、萩原朔美、 西嶋憲生、村山匡一 郎、中島 崇、池田浩之の専任講師によって審査会がおこなわれました。
全体の質は必ずしも低かったわけではありませんが、こじんまりと纏め上げたものが多く、(若者らしい)覇気を感じさせる作品がほとんどなかったのが、講師にとっても無念―― !
これでは秋山祐徳太子氏制作のあの〈ブリキのトロフィー〉はやれません〜〜 そこで最優秀賞の決定は秋の〈28期選抜作品展〉までは持ち越されることになったという次第です。
実験映像の真髄は〈大胆さと緻密さ〉〜〜 観手の脳天をかち割るような作品を期待してます―― !〜〜といったわけで、
今回は「優秀賞」と「個展賞」の発表―― 。優秀作品 (秋山祐徳太子氏制作の版画)
『断頭台』 高田道子 8mm 20分
『旅人の視る夢』 石垣友子 8mm 11分
『私が選んだ父』 国井智美 video 40分
『つき・よみ』 ヤジマチ サト士 三輪 浩光 山本 武 刈込 静子 岡部 奏・16mm・16分個展賞 (イメージフォーラム・シネマテークでの個展)
ひらた たかひろ 『slide002』video 5分、『delay』video 5分
『つき・よみ』のスタッフ = ヤジマチ サト士&三輪浩光etc 『私が選んだ父』の国井智美 『旅人の視る夢』の石垣友子 『断頭台』の高田道子 個展賞―― ひらた たかひろの『slide002』は、エレベーターの中から向かいのビルを水平移動で撮った画像を元にしてできた作品―― エレベーターが上昇してゆくと、被写体のビルも階を重ねてゆき、やがてそのビルの頭上に広がった高層ビル群は絶景―― !
この作品の魅力は何といってもその素材となった映像のロケーションの良さです。(彼は専科生で、本科生だった)昨年作った『The Trains』が最優秀賞を獲得〜〜 その作品でバンクバー映画祭に招待され、これはその時に撮った映像なのです。
彼はこの『slide002』の他に『delay』も提出〜〜 (昨年の『The Trains』と合わせて)構造映像の期待の星になりつつあります―― !優秀作品――
高田の『断頭台』は、小さく纏まった作品群のなかにあっては異質〜〜 天下御免の<狼藉シネマ>でした。平成のネギ女と大正の歌詠み女、更に歌舞伎で馴染の助六が絡み、遊女・夕霧と梅千代のレスビアン 〜〜 内容も撮り方も無茶苦茶ですが、ネギ地獄に嵌った助六の〈濃い演技〉と、ネギ女の刻みに刻んだその〈ネギの量〉とで圧倒〜〜 有無をいわせないそのエネルギーに軍配が上がりました!(笑)
石垣の『旅人の視る夢』は、自分を取巻く環境や対人関係への不安と不信感から生まれた作品〜〜 まだ馴染めない自分の住む〈街〉、そして分らなくなった〈彼〉のこと〜〜 これらからくる焦燥感を男女の手などで表現しますが、圧巻は地下道でのバルブ撮影で、拒絶される対人関係を、風のように流れる人影の渦のなかに捉えており見事―― 忘れられないショットとなりました!
国井の『私が選んだ父』は、蒸発した父のことを関係者から聞いてゆく作品〜〜 家族や肉親を扱ったパーソナル・ドキュメンタリーは決して珍しくはありませんが、登場人物の夫々の〈距離感〉が上手く表出されていて新鮮でした。父と母、父とその両親や兄弟、父と(かつての)上司や友人、そして否応なくその遺伝子を受継いでいる作者自身の父との距離〜〜 その距離感を〈作品として〉更に輝かせるには、トップ・シーンにあった〈独りテニス〉をもう一度やってみてはどうでしょう。(例えば雨の日に)無心にラケットを振っていると、一気に縮まったような気がする父との距離〜〜 そしてそれがポルトガル行きに繋がってゆくというのはどうでしょう―― (否、これは単なる思いつきですので、他にもっと良い方法があるかも知れません〜〜 考えてみて下さい!)
ヤジマチ、三輪、山本、刈込、岡部の専科共同作品『つき・よみ』は16mmの力作です。熱帯を感じさせる森のなかで展開するシュールな時空〜〜 この湿度の高い森に迷い込んだ少年と少女、此岸と彼岸が行き交う時間のなかに、オオトカゲが徘徊し、のたうつ人体魚―― 食いちぎられた耳は青白い炎を上げて魅了する〜〜 が、スタッフたちの応えは「まだまだ、進行途上―― !」だそうなので、〈選抜作品展〉を期待しています!優秀作品は以上の4点に決まりましたが、今年はどんぐりの背比べ〜〜 甲乙つけ難い作品たちが目白押しで、ほんのチョッとの差で落ちたのが沢山ありました。
ぼくが捨て難いと思った作品を列挙しますと〜〜、(プログラム順)
渡邊智史 『ANOTHER TEMPERATURE』、和田 淳 『鼻の日』、河原夏子『双』、小嶋朝子 『ムウジュ』、村田雄一 『連続写真』、 鹿又紀恵 『巨像恐怖症』、野村雅夫 『CREVASSE』、白山惠子 『凸凹』、八木 晶 『View View's』、山川 環 『breathe』、岡崎 潤 『回し車』、山田泰士 『カメラ』、山本 武 『ノッポンのダメだし』、岡部 奏 『緋色の傷口』など、など……。他に『凍える月』の最勝健太郎と『口の無い太陽は8を描く』の土屋周一がいますが、彼らの力は〈16mm講座〉で知っているのであの程度の作品では納得出来ません――!
ここで取上げなかった作品も含めて、これからが勝負――!
「2005」と刻まれたこの〈ブリキのトロフィー〉を獲得するのは、一体、だれ――!?
秋山祐徳太子制作の
〈ブリキのトロフィー〉かわなかのぶひろ氏による〈第28期卒業制作展全作品講評〉
※ 秋の〈選抜作品展〉は、またこの頁で紹介させて頂きます。
〜作者からのメッセージ〜
口の無い太陽は8を描く●約1年を通して同じ時刻、同じ場所から太陽を1枚の写真に収めると、その軌跡は8の字を描いている。それは太陽からの伝言かもしれない。
つき・よみ●時間も空間も螺旋のように重なる処・・・ 意識の混沌の中から覚醒の森へ・・・ 少年と少女は足を踏み入れる。少女は自然に触発されながら「つき」を重ね、「とき」を経験していく。五感を頼りにし解放へと向かう。少年もまた、黄泉からの誘惑を受け、自らの化身をその入り口に差し出す。
性への覚醒と死の薫り・・・ 深い森の中で、静かにふたつは融合していく。
断頭台●吾が目の痛みよいづこより。女の頬を伝う涙が、時空を越えたシンクロニシティを呼び起こす。その昔、助六によって引き離された遊女・夕霧と梅千代の無念の想いが、平成のネギ女と対象の歌詠み女の間で交錯する。助六への憎しみを、手元の包丁に込めるネギ女、無念の想いを筆に込める歌詠み女。そして、かつて夕霧への想いを果たせぬがゆえに、その首をはねた助六は、平成の世にネギとなって自らが断頭台で切り刻まれることになる。
カメラ●私は山田です。私は、カメラという機械がなぜ目の前にあるのか、そしてそもそもなぜ誕生したのかと考えています。私は山田です。私は、何故この機械が誕生した後、そしてこの機械が用意に手に入る場所に私がいることの意味を考えています。カメラが目の前にあったおかげでこの映画ができました。
双●これは休日の朝、布団の上で空想している話です。私は空想している間、体が無くなったような気がするのですが、ちゃんとあることを感じ取ろうとしてこの映画をつくりました。なんども考えて、時間ばかりかかりましたが、できてみるとシンプルな作品でした。
旅人の見る夢●「わたし」はまだこの街になじめない。彼のことは今もよくわからない。振り払われた手はいまもつなげないでいる。偶然見かけたカップルによって、全ては少しだけ変化しはじめた。夢は、時に心の底を見せてくれる。
克己!クローンソルジャー●「ワシら石油採ってよ、ええ暮らしするためにいきとるんやないの。テロリストいわして、何が悪いの?」「言うたらあれらはテロの汁でメシ食うとるんよ。」「異教徒の十字軍、殺(と)ったらんかい!!」
実はゴッド=(イコール)アッラーであるという事実。同門対決。どうもその「似姿」であるらしい人間。何処からか見下ろすやつ。一説にはサディスト。作品と作者。人間と、奴。方便としてのクローン。あくまで方便。「ひとり殺陣」
鼻の日●ぬっくぬくの気持ちいい場所ばかり求める人は、ぬっくぬくの気持ちいい場所にずっといられるとは思っていない。そもそもぬっくぬくだけしかない場所なんてあるはずないのだ。それでもなお、ぬっくぬくを求めるのは、それは逃避であり、諦めであり、モヤモヤした希望でもある。そしてそのモヤモヤの希望こそが、ぬっくぬくの場所にずっといられる唯一つの手段なのかもしれない。どうかモヤモヤがぬっくぬくでありますように。
<上映作品>●Aプログラム
ANOTHER TEMPERATURE 渡邊智史/ビデオ/10分
CREVASS 野村雅夫/ビデオ/30分
little circus 小坂由布紀/ビデオ/8分
ムウジュ 小嶋朝子/8ミリ/13分
口の無い太陽は8を描く 土屋周一/ビデオ/20分
ソレデイテ アワキ ヒ 菊池文人/8ミリ/5分
つき・よみ GATERA(ヤジマチ サト士、三輪 浩光、山本 武、刈込 静子、岡部 奏)/16ミリ/16分
●Bプログラム
東京ぽっかり 山澤立樹/ビデオ/5分
光の記憶 三輪浩光/16ミリ/7分
スミカ 塚原健太/8ミリ/10分
東京タワぁ 山本武/ビデオ/15分
断頭台 高田道子/8ミリ/20分
連続写真 村田雄一/ビデオ/8分
巨像恐怖症 鹿又紀恵/ビデオ/14分
カメラ 山田泰士/ビデオ/20分
●Cプログラム
From Voice 前田真吾/ビデオ/8分
双 河原夏子/8ミリ/6分
いれてッ! 佐々木友紀/ビデオ/30分
凸凹 白山恵子/8ミリ/10分
緋色の傷口 岡部奏/ビデオ/8分
極力最優先 箕輪潤/ビデオ/7分
fragment 田辺沙織/ビデオ/15分
旅人の視る夢 石垣友子/8ミリ/11分
●Dプログラム
克己!クローンソルジャー 丸山耕司/8ミリ/20分
breathe 山川環/16ミリ/10分
あまい果実のかおり 橘由美子/8ミリ/4分
slide002 ひらたたかひろ/ビデオ/5分
レーモンとルフェーヴル 西剛/ビデオ/11分
私が選んだ父 国井智美/ビデオ/40分
振り返るまで 愛川佳志/8ミリ/5分
鼻の日 和田淳/ビデオ/8分
<受付>
当日900円/会員600円
第28期のグランプリは、『つき・よみ』に――!
持ち越しとなっていた第28期の〈大賞〉は、1月の8日&15日のIFシネマテークで上映された〈選抜作品集展〉で、GATERA=ヤジマチ サト士・三輪浩光・山本 武・刈込静子・岡部 奏の『つき・よみ』に決定しました。
候補に挙がった作品は他に、国井智美の『私が選んだ父』、山本 武の『東京タワぁ』、鹿又紀恵の『巨像恐怖症』、野村雅夫の『CREVASSE』、小坂由布紀の『little circus』など〜〜 専任講師の間で議論がなされ、秋山祐徳太子氏制作のブリキの彫刻は『つき・よみ』がゲット――!春の卒業展の段階では、やや空回りを見せていた『つき・よみ』でしたが、その後の頑張りで(その)大胆な発想に緻密な技術が絡み合ってきて不思議な魅力の16mm〜〜 久々のシュール・レアリズム映画の傑作です!
背景の熱帯植物群や登場人物も良かったが、特に惹かれたのは耳を初めとする小道具たちの存在感〜〜 その作成と、それを〈表現〉として活かすための(様々な)工夫には感心させられます。
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