イメージフォーラム第33期卒業制作展

受賞者発表、
専任講師によって最優秀作品賞と優秀作品賞4作が選ばれました!

最優秀作品賞には
渡辺 亮 『THE 梅屋商店』

優秀作品賞には

山田園子 『Water Closet』

磯部信也
『EDN』

酒巻 玲
『one day』

阿保丈晴
『会社員力

This is it 真夜中の政権交代チェンジ

   
 第33期卒業生と専任講師たち  奥山順一氏からトロフィーを受ける渡辺君
第33期の卒業制作作品は20品と数の上では少なかったが、その内容においてはかなり充実した年度となりました。こういう年の専任講師の顔はみな晴れ晴れとしていて気持ちが良いものです:-)))))))))))
さて、専任講師の投票の結果、最後まで大賞を競ったのは満票同士の『THE 梅屋商店』と『Water Closet』でしたが、後者にはまだこの先の展開があるということで、『THE 梅屋商店』に決着したという次第です!

最優秀賞の
渡辺 亮『THE 梅屋商店』〜〜タイトルとなった梅屋商店というのは作者の実家の水産加工の屋号で、その作業において捌かれてゆく魚たち、泡立つ水槽、無人で動くフォークリフトなどが、短いカットの積み重ねで綴られ、不気味なサウンドを伴っておどろおどろしく展開してゆきます。特に作業場の片隅に積まれていた作業用のゴム手袋が(コマ撮りによって)崩れ落ちてゆくシーンは秀逸であり、次から次へと魚たちの恨みの眼が迫ってくる場面も強烈な印象を与えます!
作者が子供の頃にその加工場から聞こえてきた機械音が耳の中で渦を巻き、魚たちの怒れる姿が眼に焼きついてとても不気味に感じられたそうです。
この作品はその時の感情を基にしたのだそうですが、作品全体がよく計算された構成で、映像においても、音の使い方においても非の打ち所がないほど完璧でした :-))))))))))
しかしこの儘だとその見事なテクニックに見惚れ、観手には作者の“制作意図”が伝わりません。映像コンクールなどに出品するなら、是非何らかの方法でそれを考えた方が宜しいと思います。

優秀作品の第一席・
山田園子『Water Closet』はシンプルな木炭画のアニメーションですが、作者のこだわる“水”を実に戦略的に展開させてゆき、観客の心を自分の世界に誘い込むのに大成功してます!
まず白い画面に“Water”の文字が現れ、その中の“e”だけを残して消すと、その“e”がそのままの位置で活かされて“ Closet”の文字となりました。『Water Closet』は(頭字語の)WCで、戦後派の僕らにとっては大変に馴染み深い英語でしたが、作者にとっては今の washroom、restroom、lavatory、toiletなどではなく、どうしても“Water”が入った言葉が必要だったのだと思います。
部屋の中に現れたひとりの女性は、左から右へと部屋べやを横切り、やがて水洗便所へ〜〜、用を足した彼女が立ち上がると、便器の中の水だけは何と本物の“Water”の質感でそこに渦巻いていたのです!手洗いの水もその“Water”でしたが、更に驚かされたのは作者の細部へのこだわり〜〜 窓ガラスについた水滴までもその“Water”であったのです :-))))))))))
バスルームでの女性は勿論その“Water”でシャワーを浴び、その時に一本の髪の毛が泡と一緒に排水溝に吸い込まれていき、終わりとなりました・・・・・ が、実はそれから先があり、下水管に入ったその“毛”が辿る世界が展開するのだそうです!
ともあれ、ある小説の中の「水は女性のシンボルなのだ」という言葉に惹かれて始まったというこの『Water Closet』〜〜 更に期待が膨らみます。

優秀作品の第二席・
磯部信也 『EDN』〜〜 これもほぼ全員が投票した作品で、昨年の夏頃から岩手県にある鉱山跡に入って16mmカメラで撮った力作です。
廃墟というのは人の心を惹きつける力があるようで、これまでにも多くの人が挑戦してきました。中でも
IF-25期の大門末希生・「hierophanie」は、それまでの“廃墟もの”とは異なる新しい視点から軍艦島に挑んで成功し、脚光を浴びました。
さてこの作者の狙いは、その廃墟にテーブルや紅茶セットなどを持ち込み、こわれかけのテープレコーダーから流れるサウンドをバックにして、コマ撮り可能なボレックス・カメラを駆使〜〜 そこに自分の世界を構築しよう奮闘します。
特に廃墟の団地の全景をバックに、画面の左脇に設置した衝立スクリーンにプリント・アウトされた団地の画像を動かしていたのには吃驚させられました :-)))))))
また吹雪の映像も魅力がありましたが、編集が杜撰〜〜 残念ながら観手との勝負が出来ているとは思えませんでした。“逆回”による降雪シーンはこの廃墟に流れる時間を逆流させたいという作者の“意志”が感じられて素晴らしいが、電話が鳴った後に3カットあればよいと思いました!

酒巻 玲one day〜〜は沢山の皿が出てくるアニメーションで今までに類例を見ない作品でした。その皿たちのサイズはまちまちで皿の上には家があったり、蟻のような小人が大きな皿でスープを作ったり、または小人が皿を投げたりもしていました。
実をいうと、作者のアニメーションのセンスの良さは感じましたが、ぼくにとってはその狙いが読めず難儀な作品でした。ところが(後で)聞くところによると、作者の小さな姪が皿を使って遊んでいるのを見ての発想だそうでした!
その話を聞いた途端に、その自由奔放な展開がとても心地よく伝わってきました :-))))))
もし映像コンクールに出品するなら、何らかの形でその“発想のコア”を伝えるべきだと思います。

阿保丈晴
『会社員力 THis is it! 真夜中の政権交代チェンジ』
〜〜 これはそのタイトルでも分かるように、同じ会社の同僚を巻き込んで作ったかなり大掛かりな“お遊び”でした。
主演の若い女性は会社でポカを連発し、同僚からは馬鹿にされ、上司からは罵られて残業となりました。
と、どうでしょう!彼女のパソコンのマウスの先の“矢印”はモニターの外へ走り出して彼女の意のままに作動〜〜、遂には何時も叱られているにっくき上司をクリックして捕まえ、“ゴミ箱”の中にポィッと捨ててしまったのです! このアイディアは作者がDTPオペレーターだけに見事でした :-)))))
けれども全体の構成や展開などはイマイチ・・・・・・ しかしながら、仲間を巻き込んで作品を作れるその才能が買われて受賞作となったという次第です。
    
 −ーーーーーーーーーーーーーーーーー
選外作品にも力のある作品が多くありました。宮崎勇磨『てつうまおやじ』は構成をし直し、撮り直しをすれば新しいパーソナル・ドキュメンタリーとして輝く筈です。嶋 倫子のアニメ『Working』も非常に面白いアイデアでしたが、全体の構成がちょっと甘かった、、、小林亮太『ワルツ』は頑張ったがやや空回り、、、佐多照章『タナスト』は、、、板倉明香『冷蔵庫がうるさい』は、、、満田雅之『LAST PSYCHDERIC』は、、、ちだふみこ『not empty』は、、、浅野泰洋『seek』は、、、瀬野高秀『移動式六畳』は、、、と、挙げていったら切りがないほど入選作と紙一重のものが連なってきます。
ともあれ、これらの作品も一度“観手の視点”に立ってから練り直せば、逆転の可能性は大いにありますので頑張って下さい :-)))))))))))))
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
イメージフォーラム第33期卒業制作展
多くの映像作家を輩出したイメージフォーラム映像研究所 ワークショップの卒業制作展。(映像制作コース第33期)一年を通して築かれたイメージが鮮やかに結像する。映像作家の第一歩。20作品3プログラムを一挙上映。
秋山祐徳太子制作のブリキのトロフィー

プログラム

Aプロプラム
タナトス 佐多照章/ビデオ/5分
冷蔵庫がうるさい 板倉明香/ビデオ/4分
Water Closet  山田園子/ビデオ/7分
LAST PSYCHEDELIC 満田雅之/ビデオ/5分
ワルツ 小林亮太/ビデオ/45分
てつうまおやじ 宮崎勇磨/ビデオ/20分

Bプログラム
one day 酒巻玲/ビデオ/4分
帰るところ 志摩美紀/ビデオ/7分
EDEN 磯部真也/ビデオ/25分
not empty ちだふみこ/ビデオ/12分
会社員力 This is it 真夜中の政権交代CHANGE  阿保丈晴/ビデオ/17分
モーニング 新堂有貴野/ビデオ/3分
田舎の休息 近藤泰洋/ビデオ/5分
seek 浅野佑典/ビデオ/5分

Cプログラム
Handiwork 嶋倫子/ビデオ/5分
検札係たち 高橋範行/ビデオ/30分
Blue 大野紗恵/ビデオ/8分
移動式六畳 瀬野高秀/8ミリ/28分
tension 東清仁/ビデオ/10分
THE 梅屋商店 渡辺亮/ビデオ/10分

すべて2010年作品

3/19(金)19:00/Aプロ
3/20(土)
14:00/Bプロ 16:00/Cプロ
3/21(日)
14:00/Cプロ 16:00/Aプロ
3/22(月・祝)14:00/Bプロ

   
      渡辺亮のTHE 梅屋商店      山田園子のWater Closet


==============================

top page