かない勝丸プロ初期の恩人=ゼロ次元の加藤好弘さんと岩田信市さん!


私たちの処女作である『無人列島』ですが、1968年にオリジナル・シナリオの初稿を書き上げた段階で、かわなか のぶひろ氏の推薦もあって「映画評論」の編集長・佐藤重臣さんにお会いすることが出来ました!
その初稿を重臣さんも気に入ってくれて、出演をお願いしたい前衛パフォーマンス集団≪ゼロ次元≫の加藤好弘さんを紹介してくれることになり、その加藤さんも、「とても面白くなりそうなので、是非金井氏にお会いしたい~~」と、とんとん拍子に話が進んでいきました!

そこでちょっとビビりながらも、教えられた渋谷の南口にあった超高級マンション~~その中に、「電気工事 ゼロ次元商会」というプレートを見付け、恐る恐る美術雑誌や週刊誌を賑わ合わせている話題の人物=加藤好弘氏にお会いすることが出来ました:-))))))))))

こちらはカメラマンとしてはそれなりに頑張ってきましたが、脚本も演出も初めてのど素人~~だから逆に開き直れて、国家に騙され、何もかも信じられなくなった少年時代の≪明け方の悪夢≫を、新しいシュールレアリスムを意識したプロットですので、それなりに自信は有りましたが、加藤さんは既に前衛アーテストとして様々な実績を積んでこられた御仁~~お会いするまでは心配でしたが、実はとても気さくなお方で、年齢も私と同い年だということもあってか、すぐに解け合い、≪ゼロ次元≫の登場シーンなどを中心に話し合いました。

先ず彼らの最初の登場シーンですが、新聞紙が張り巡らされたアパートの一室で、そこにこの作品の主人公=日出国(串田和美)が現れ、脅える団地妻(青木一子)を犯した後、殺害~~するとその死体のお腹がみるみる内に膨れ上がってきて、そこから次々とゼロ次元のメンバーと重臣さんが生まれ出て来ると設定です。

そこでその出産シーンをどういう仕掛けで撮れば良いのかを相談~~加藤さんが繰り出すその奇抜なアイデアで段々と具体的な映像が見えてきて、勇気が湧いてきました!
≪ゼロ次元≫の次の出番は繁栄の街で、更に逞しくなった日出国を追いかけていきますが、国会議事堂前での闘いで遂に次々と切り捨てられてしまいます。

するとそこに、半裸の大男が立ち現れて、日出国との大立ち回りを繰り広げます~~が、実はその大男役がまだ決まってないと話すと、すかさず加藤さんは「それは<名古屋ゼロ次元>の岩田信市で決りだ!」と仰って、岩田さんの写真を見せてくれました:-)))))))))

さて、訊くところによると≪ゼロ次元≫のモットーは、「人間の行為をゼロに導く」というコンセプトの元に1963年に名古屋で結成され、様々な過激なパフォーマンスを至る所で繰り広げ、当時の美術誌や週刊誌などを大いに賑わしていましたが、やがて加藤さんたちは東京に進出し、岩田さんは名古屋に止まり、東京と連絡を取りながらも地元ならではの活動を続けていました!

また様々な前衛アートを支援する名古屋での拠点ともなっていた岩田さんと岩田家~~『無人列島』の名古屋上映の時には、状況劇場の唐十郎さんも次の公演の準備のために来ていて、ご一緒に岩田家の二階で宿泊させて頂きました:-))))))))))

その後岩田さんは≪ゼロ次元≫の延長上として、愛知県を中心に1979年、座長に原智彦氏を据え、「ロック歌舞伎スーパー 一座」を結成し、その主宰として国内はもとより、海外へも進出しヨーロッパでの公演は何と230回余りとか~~特にドイツ公演での『リア王』(原作・シェイクスピア)は話題を呼び毎回スタンディングオベーションが何時までも鳴り止まなかったそうですが、岩田さんは2017年に病死 享年八十一歳

その岩田さんともども、加藤好弘さんも韓国の文化センターなどで大いに評価され、我が国でも六本木ヒルズの森美術館でのワンマンショーは満席~~熱弁をふるっておりましたが、2018年の春に八十一歳で旅立ちました。
   
殺された母の敵討ちに向かう≪ゼロ次元の舞≫
先頭が加藤好弘さん
国会議事堂をバックに日出国に立ち向かう
大男役の岩田信市さん 

さて2018年の秋、愛知県で開催された≪第23回アートフィルム・フェスティバル≫で、〈追悼:ゼロ次元〉題して『無人列島』を是非上映したいというオファーが有り上映されましたが、この作品が作られたのは半世紀前で時代背景が現在とは大きく違っておりました。

アメリカにおいてはベトナム戦争への反戦運動などを皮切りに様々な反体制運動が展開~~若者たちの怒りの炎はイギリスやフランスなどへも飛び火し、やがてそれは日本へも伝わって東大闘争、日大闘争の真っ只中~~『無人列島』はその闘争の最中であった1968年秋のクランク・インとなりました!
そんな激動の中で生まれた『無人列島』~~自主上映の後、京大の「バリ祭」を皮切りに、東大映研での上映会を含めて、全国の学園祭などへと大きく広がっていきました!
その一方、≪新しいシュールレアリスム作品≫として、ヨーロッパの国々からも評価され、後年ベルギーに呼ばれた折、通訳の女性が加藤好弘さんの大ファンだったことなどもあって、上映後のトークショーも大いに盛り上がりました:-))))))))))
それはさておき、二年ほど前に愛知県で上映された当時は全国的に若者たちの雰囲気がのんびりしてしているように感じられていたので、どう受け取られるのか心配でしたが、担当者からのメールによると、「現在の若者たちも様々な不条理に対する悩みや憤りを感じており、上映後のトークも盛り上がった!」~~そうですので嬉しくなりました:-))))))))))
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