bX4 2003,12.26  時間を超えて 今年の収穫         95へ

<映像万華>へのご訪問、誠に有難う御座います。
生来物臭な僕
(やつがれ)がマイペースで綴ってきたHP 〜〜 それでも皆様方のお陰でアクセス数は4万を超えました。このペースで行くと<夢の5万>も秋には到達できそうですので、御贔屓のほど何卒宜しくお願い致します。

さて、今年の収穫は何と言っても我が阪神タイガースのセリーグ制覇です。
少年時代に後楽園球場で見た
藤村富美男の豪快なスイングに魅せられ、村でただひとりのタイガース・ファンとして始まったものですから格別の嬉しさです。
それにしても、あの
吉田野村監督時代の最下位4年連続には参りました。いやそれだからこそ18年振りのこの優勝がより感動的だったのかも知れません……!(笑)

ともあれ、今年はあらゆる分野で最低・最悪でしたが、そんな中でタイガースの躍進と若いスポーツ選手の活躍だけが光った年です。
中でも
北島康介は世界選手権で平泳ぎ百、二百メートルを共に世界新で制覇、また末続慎吾も世界陸上で男子二百メートルの銅メダルを獲得しました!(北島のダブル世界制覇も凄いが、トラックの短距離は黒人の独壇場でしたから末続の活躍も想像を超えたる快挙〜〜来年のオリンピックが楽しみです)

その光景(勿論TV観戦ですが)が脳裏のどこかに焼き付いていたのでしょう、先日多摩美術大学の映像演劇学科で1日講師をした折、学生の質問の中に「好きな四文字熟語は 〜〜?」というのがあって、思わず出てしまった熟語が「有言実行」でした。
これは「不言実行」からもじったスポーツ新聞の造語ですが、北島の「世界新を出す!」や末続の「メダルを獲る!」など、公言してそれを成し遂げてしまう凄さから生み落とされました。
このアスリートたちを
小泉首相も見習って「言ったらやる」 〜〜 本当の行政改革を断行してもらいたいですよ ――!

前にも触れましたが今年は割と本を読みました。その1番の収穫は吉増剛造「詩をポケットに」(NHKライブラリー)です。
これはNHKカルチャーアワー・文学と風土『詩をポケットに』をもとに作成したものだそうですが、明治、大正、昭和の作品
(詩・短歌・俳句)を取上げ、その風土や環境、そして詩人たちの心の中を旅する詩論です。
詩人たちの言葉に対する拘りとその奥深さに改めて驚嘆させられましたが、それは詩人・吉増剛造をして辿り着けた詩人たちの魂の住処です。

映像分野では、パルテノン多摩で観たジャン・コクトー『美女と野獣』('46)『オルフェ』('50)とが時を超えて心に響きました。
コクトー作品の共通テーマは「詩人は何度も死ぬことで彼そのものになる」 〜〜 のだそうですが、『オルフェ』での此岸と彼岸の境界線は鏡でした。その手作りの実験的映像は今はやりのCGなどでは到底真似の出来ない味わいのある映像で感激しました。
これまでコクトー映画は観る機会がなく、
『オルフェの遺言』(’60)をその昔ATGで観ただけでしたが、DVDが発売されたそうですので、コクトーの虜になりそうです。(笑)

ぼく自身としての収穫は、初めてのDV作品・スーパードキュメンタリー前衛仙術』を制作・公開したことでしょうが、これを機に2年に1作の割で制作したいと思っておりますので、宜しくお願い致します。


bX3 2003,12.13   師走の柚子の実

今年も、残すはあと半月となりました。

授業は、15日にあるIF付属映像研究所Aクラスの〈卒業制作中間講評〉と、18日にある造形大〈映像芸術V〉を残すだけですが、自作の英語版制作など何や彼やで気の抜けない日々が続いています。

そういった気ばかり焦る中で、ままよと既に一読している吉増剛造さんの著作「詩をポケットに」を取り出し、好きな詩人の詩を声を出して読んでみる 〜〜 と、不思議と心が落着くのです。

さて、我が家には2本の柚子の木があります。
その1本はホンユズでこちらはまだ花さえつけたことがありません。
もう1本はハナユズ系ですが香りもなかなかによく、毎年沢山の実をつけてきました。

しかしその実はホンユズに比べるとやはり見劣りがしていたのですが 〜〜 今年はその実に変化が起こり、(ホンユズに負けないくらい)大きな実をつけたのです!

その理由をつらつら考えてみるに、9月頃に与えた肥料が思い当たりました。
これまで柚子に肥料など施したことはありませんでしたが、葡萄(巨峰)の葉に勢いがなくなったので追肥をやったついでに、柚子の根元にも配合肥料を与えていたのです。

たわわに稔った大きな柚子 〜〜 食卓は勿論のこと、冬至の湯船にも冬の香りを漂わす筈で、忙しない師走の日々にゆったりとした潤いを与えてくれるのです。


bX2 2003,12.3   健康診断と競馬・G1

大概の人がそうだと思いますが、健康診断には行かなければと思いながらも、自覚症状が出ないと何だか億劫ですよね 〜〜。
しかし甘党なので糖尿病などが心配になり、この8月に〔高齢者検診〕を受けました。大映撮影所時代の定期検診からなので、何と40年振りの検診でした 〜〜。(笑)

その結果ですが、糖尿病や高脂血症など関する検査などは全て問題ありませんでしたが、肝臓に関する数値が高かったのには驚かされました。
若い頃には飲んでもいましたが、ここ10年間はお酒とは無縁の生活だったので、肝臓がやられていたとは想像もしていなかったのです。

その数値は、GOT―55GPT―75γ-GTP―34
友人の那田尚史さんも肝臓に関する数値が高く、そのHPの中の〔同時進行ダイエット計画〕に〔健康値〕と〔自分の数値〕とを表にして載せています。が、酒好きの彼と違ってこちらは飲んでもいないのに同じような数値だからこれは理不尽ですよね。(笑)

そこで1ヶ月後に精密検査をしたところ、GOT―49GPT―68 と下がっていました。この間しっかりとウォーキングを続け、肝臓に良いといわれるウコンを飲んでいたのでもう直ぐ〔健康値〕 〜〜 と思いきや、医師は「この位は測定の誤差範囲内で、良くなっているとはいえない。4〜5ヶ月したらまた検査をしましょう」ときたので 〜〜 がっくりしました。(笑)

そろそろ第3回目の挑戦 〜〜 ぼくはウォーキングとウコンの効果を信じてますので、どれだけ数値を下げているのか、恐さの中に楽しみもあります。

 

さて、つらつらおもんみるに、ぼくの趣味や道楽、そして嗜好品も随分と減りました。(妻と一緒の)3ヶ月に一度の温泉旅行はありますが、他にはせいぜい庭弄りと散歩と煙草ぐらいでしょうか 〜〜 しかしこれでは寂しすぎるので、この秋からG1レースだけ競馬を復活させました。

とはいってもまだ、菊花賞(10/26)、天皇賞(11/2)、エリザベス女王杯(11/16)、ジャパンカップ(11/30)の4レースだけです。
菊花賞の結果は既に10月29日号で触れましたが、その記事を読んだ那田氏から「〔3連複〕より〔馬連〕の方が絶対に率が良いですよ 〜〜」というメールがきます。

が、ぼくは可能性の高い馬しか手が出せないタイプで、極端な〔穴馬〕は買えません。それでいて〔万馬券〕への夢は魅力的 〜〜 その条件を充たすのはやはり〔3連複〕と、拘った訳です。
その結果、天皇賞は1着、2着、4着で、エリザベス女王杯も1着、2着、4着で共に外れ 〜〜、先日のジャパンカップは1着〜4着まで入って4,210円(特券なので純益は32,100円)をゲットしましたが、〔馬連〕だと何と7,200円の高配当でした ――!

那田氏の意見を取り入れていれば4レースとも空振りはなかったのだから残念です。
賭け事も負けた時にはストレスになり、趣味で健康を損ねたらこれほど馬鹿らしいことはありませんよね 〜〜。
そこでこれからは方針を変えることにして、1回の資金(10,000円)を2つに分けて、同じ馬5頭に〔馬連〕と〔3連複〕で5,000円(500円の5頭Box買い)づつ注ぎ込むことに決めたという次第です。

ともあれ、
2勝2敗でもトータルではかなり勝っていますので、軍資金は有馬記念までは大丈夫の筈です ――。(笑)


bX1 2003,11.22   高幡不動と「高林陽一の宇宙」

もう直ぐ師走 〜〜 小春日和と時雨とを繰り返しながらやがて2003年は幕を閉じ、否応なく2004年がやってくるのですね ……!

その2004年度の(NHK)大河ドラマは「新選組」だそうで、ぼくの住む高幡不動では「誠」の旗がはためいています。
何せここは新選組副長・土方歳三の故里ですので、観光PRに市(日野市)も商店主たちも懸命 〜〜 この機を逃す訳にはゆきません!

地名ともなっている高幡不動の境内にはその歳三の銅像 〜〜 これは7、8年も前に建てられてたので大河ドラマを見越しての銅像とはいえないでしょうが、それにしてもその面立ちは凡庸そうな二枚目で、ぼくは気に入りません ――!
歳三の肖像写真からはニヒルな覇気が漂っているのに 〜〜 とても残念です。

その銅像が建った頃に、駅前には池田屋という飯屋が開店しました。
店主は熱烈なる新選組ファンのようで、お品書きには近藤 勇丼、土方歳三丼から、沖田総司、永倉新八、斎藤 一、松原忠司、武田観柳斎、井上源三郎、谷三十郎、藤堂平助、三木三郎、原田左之助と、1番隊から10番隊組長の名のついた丼が続いています 〜〜 とはいっても中身は親子丼だったり、鰻丼だったり、それでも味噌汁や納豆がついたりして、なかなかの評判です 。(笑)

土方歳三の銅像 多摩の池田屋

さて、池田屋といえば京都、京都といえば個人映画の先駆者のひとり・高林陽一が浮かんできます。
その高林監督の16年振りの作品『愛なくして』が完成し、同時に著作「魂のシネアスト 高林陽一の宇宙」(ワイズ出版 2000円+税)が上梓されました。

今その本を読み終えたところですが、これは心に染みる(彼と映画たちの)自伝でした。
中学生の時に終戦を迎え、1日にして天皇制からデモクラシーへの転換に、国家や社会にも、自分も含めた人間という生きものにも不信感を持つようになり、(その後)自己存在の唯一の理由として映画を撮り続けてきたようです。

その初期作品は8mmですが、16mmフィルムを8mm幅に裂いたWエイト 〜〜 '59年には『南無』、'60年には『石ッころ』『さすらい』などが誕生し、それらの作品は荻 昌弘(映画評論家)などに高く評価されることになります。
また国学院大学の映研でドキュメンタリーを制作する小川紳介などともその頃知合い「グルッペキネマアルファ」という研究会が作られたそうです。

ぼくが高林陽一の名を知ったのは、『石ッころ』がイタリアのモンテカティーニ・アマチュア国際映画祭で金賞を受賞したという記事からですが、同じような形で彼の存在を知った飯村隆彦が自作を持って高林家を訪れ、そして無二の友となる大林宣彦との出会いとなります。

高林作品はやがて8mmから16mmへ、そして35mmへとなり、公開も自主上映から大手配給会社へと移ってゆきます。が、この本を読んでぼくの心を揺さぶったのは8mmや16mmの頃の話でした。
彼のホームグラウンドが京都ということもあって、その自主上映時代の作品には未見のものが多いのですが、新作『愛なくしては』の公開はどうやら旧作を組み込んでのプログラムになるようなので楽しみです。 ※「特集上映・高林陽一の世界」大阪シネ・ヌーヴォ 

ともあれ、
映像を志す若い人たちに高林陽一著「魂のシネアスト」をお薦め致します。
そして関西の上映後には東京での「特集上映・高林陽一の世界」の公開があると思いますので、新作とともに初期作品もお見逃しのないように 〜〜!(敬称略) 


bX0 2003,11.8   村山匡一郎氏編纂の本・2冊

前にも触れましたが、PCを始めてから本を読むのが億劫になっていました。(笑)
2年ほど前のことになりますが、ちょっと心配になってPCの師匠・鈴木志郎康さんにお訊ねしたところ、「ぼくも読まなくなったよ、かったるくって〜〜、」といってました。が、鈴木さんの「曲腰徒歩新聞」を見ていると、どうして相変らずの読書家なのです。(笑)
こちらもPCに慣れてきたぶん余裕ができて、近頃はまた本を手にするようになりました。

さて、IF(専任講師)の同僚であり、山形国文祭でも一緒だった映画研究者・村山匡一郎(きょういちろう)さん〜〜 映画に対するそのエネルギーには何時も感心させられていますが、先日彼の編纂による2冊の本を入手しました。

フィルムアート社 2,000円+税 フィルムアート社 2,000円+税

1冊目は、この6月に出版された「映画史を学ぶ クリティカル・ワーズ」 〜〜 分り易い文章で書かれた(世界の)映画通史で、技術的な発明と開発、各時代の映画運動、事件や出来事、理論と雑誌、作品と監督などによって構成された、コンパクトな映画辞典でもあります。

2冊目は、10月に発売された「シネマ革命1960」 〜〜 その60年代の映画を中心に、音楽、美術、パフォーミング・アーツ、そして反体制運動と事件や出来事などまでが網羅されていて、新しい可能性を追求する若いエネルギーに充ち充ちていたあの時代が蘇ってきます。

私事にわたって恐縮ですが、大映東京撮影所の撮影課に入ったのが’60年、(退社してフリーランサーのカメラマンとなった後)監督としての処女作『無人列島』を発表したのが’69年なので、ぼくにとってはダイレクトに刺激的な60年代だったのです。

しかし、この「シネマ革命1960」は老人のノスタルジーの為ではなく、先の「映画史を学ぶ クリティカル・ワーズ」同様、若い人たちを対象に編まれた本ですので、先ずは本屋で手にとってみては如何でしょうか ――!


bW9 2003,10.29  ミラクルとチャンプ〜〜映像・野球・菊花賞(競馬)

もうご承知かと思いますが、IF26期・村岡由梨さんの『The Miracle』<BACA-JA2003>の優秀賞を獲得しました。
このBACA-JAは、全国の美術デザイン系の大学、短大、専門学校の映像コンクールで、いわば美術系学生のチャンピオン決定戦ともいえるのでしょう 〜〜。

我がIF卒業制作作品は(その前身であるBBCCの頃から最優秀賞を含めて毎年受賞者を輩出させてきましたが)、その最優秀作『The Miracle』をしてもここでの最高峰には立てませんでした。
2003年度のチャンプは、九州芸工大・
吉浦康裕さんの『水のコトバ』だそうですが、このコンクールの審査委員長は松本俊夫氏で、その〈審美眼〉と〈眼力〉とを自負する人ですから信頼がおけます。残念ながら『The Miracle』は、『水のコトバ』に一歩およばなかったのだと思います。
しかし、村岡作品も素材に恵まれた〈一発作品〉ではないので、この準優勝をバネにして更に邁進してくれるものと期待しています!

次は野球 〜〜 一昨日はIFの授業でしたので日本シリーズ決定戦のTV観戦は出来ませんでした。
授業が終わったのは夜の10時近くでしたが、電車に乗っても日本シリーズの話題は何処からも聞こえてきませんでしたので、不吉な予感がしました。もし我が阪神タイガースが日本一になっていたら、東京でも熱狂的なファンが多いので、乗客に反応が現れる筈だと思ったからです。

帰宅してTVを点けると、案の定王 貞治監督が宙に舞っていました。
しかし何故か悔しさが沸き起こってきません 〜〜 どうしてなのだろうと考えてみたのですが、その1つは現役時代から何時も
長嶋さんの陰に隠されてきた王さんに光を当ててやりたいという下意識が働いていたからだと思います。2つ目はこの時点での両軍の戦力の差で、甲子園での3連勝はミラクルとしかいいようがなかったからだと思います。

ミラクルはそう何時までも続きません ――!
そのミラクルを引っ張るには指揮官の〈眼力〉が大切で、決して〈情〉によってそれを曇らせてはならないのです!
第6戦の
伊良部先発には目を疑いました。(第2戦の結果で無理だと分っている筈ですが)「だってシーズンをずっと頑張ってきたやつを使うしかないやろ」では、逆に伊良部が可哀想 〜〜 最初から福原だったらミラクルは続いたかも知れません。

とは申せ、あの〈駄目虎〉をたった2年で準優勝まで持ち上げてくれたのだから、星野仙一監督には心から感謝しております !

そして競馬 〜〜 前にも触れましたが、PCを始めてから読書量が激減しました。またその一方で数十年続けていた競馬にも興味が薄れてしまいました。
読書の方は復活の兆しが現れましたので、競馬もやってみようかと先週の日曜日に渋谷の場外馬券売り場に行き、菊花賞の馬券を買いました。

昔から「皐月賞はスピード、ダービーは運、そして菊花賞は実力が勝負」といわれていますので、菊花賞は3歳馬の真のチャンピオン決定戦です。
そこで、(4)ゼンノロブロイ、(17)ネオユニバース、(8)ザッツザプレンティ、(2)リンカーン、(10)サクラプレジデントの実力馬5頭を選び、最近発売されるようになった〈3連複馬券〉というのに初めて挑戦してみました。

菊花賞の当たり馬券

この〈3連複〉の5頭買いだと、1着、2着、3着の組合せが10組出来て、当たっても安い組合せの時は掛け金の半額ぐらいにしかなりませんが、保険だと思えば宜しいと思い10,000円を注ぎ込みます。

さて結果ですが、チャンプは8番・ザッツザプレンティ 〜〜!
この5頭のうち4頭が続けて入ったので正に実力通りの結果でしたが、(2)(8)(17)の組合せは悪くはなく、配当は4,900円 〜〜 特券勝負なので儲けは39,000円となりました。

これは決してミラクルではなく、
馬の実力とその調教などを加味しての、我が〈眼力〉による勝利でした ――!(笑)


bW8 2003,10.16  戦い終えて、キュ!キュ、キュ――!!

山形国文祭の「ドキュメンタリー映画フェスティバル」から帰ってきました。

同時開催の「国際ドキュメンタリー映画祭」はまだ続いていたのですが、何せ4日間朝から晩まで遊学館(国文祭の会場)に缶詰状態だったので疲労困憊 〜〜 東京での用事もあったので帰京したわけですが、そちら(国際ドキュメンタリー映画祭)の方は後日東京でも公開されると思いますので、その時に観ることに致します。

さて、国文祭のメィン・イベントは、〈映像制作ワークショップ〉でつくられた7作品と若手映像作家の話題作のバトル=〈ヤマガタ発ドキュメンタリー Vs 日本パノラマ〉です。
客観的にみて日本パノラマの方が(全体的には)やや勝っていたと思いますが、ヤマガタ発の方に分があるプログラムもなくはありませんでした。
ともあれ、相手はプロ作家も混じる選ばれてきた作品群なので、先ずは胸を借りたというところでしょうか。

これを機に〈ヤマガタ発〉のみなさんには頑張ってもらいたいのですが、国際ドキュメンタリー映画祭のボランティアや大学祭などに引き抜かれてしまって、全作品を観たのはワークショップの講師たちだけ 〜〜 敗戦の悔しさがバネになるのに、本当に残念です――!!!

それにしても、さすがは世界の山形 〜〜 この〈ヤマガタ発ドキュメンタリー Vs 日本パノラマ〉の作品を、ある国の映画祭(?)で上映したいという有難い依頼の情報を小耳にはさみました。
そしてもうひとつの朗報は、ワークショップと同時進行で制作していた柘植成文君の個人作品『Systematic!』〈BACA-JA(ばかじゃ)2003〉に入選したという報告でした。

またこの〈ドキュメンタリー映画フェスティバル〉には、ワークショップ講師の代表作と最新作のプログラムも組まれていて、ぼくは『無人列島』スーパードキュメンタリー前衛仙術』を出しました。両作品ともに<質疑応答>の時間やロビーなどでの対話などからかなりの手応えを得ました。

その国文祭が閉幕した翌朝(14日)能瀬大助監督の『ラジオ体操の時間』へ 〜〜 〈アジア千波万波〉のコーディネーター・藤岡朝子さんから参加するようにいわれていたのです。
この映像イベントでは、映画祭で自作のPRをしたい作者などが前に出てその宣伝をした後に、映像を観ながら観客全員が体操をするというもの 〜〜 出来れば『前衛仙術』の公開前に行くべきだったのですが、そうなると土屋 豊監督の新作『PEEP“TV”SHOW』に間に合わなくなるのでやむなく事後PR(?)となってしまったという次第です。(笑)

しかしそれは無意味かというとそうでもないと思います。
昔読んだ本の中に「誰もが素晴らしい才能を持っていて、その天才的な才能とは〈忘却〉だ」といったのがあって成る程と思いましたが、観客のその〈忘却〉という名の才能は作者にとって大敵 〜〜 忘れられたらお仕舞いなのですから ……!(笑)

そこで客席を見渡すと、『前衛仙術』を観てくれた人たちの顔があちらこちらにあって、中にはぼくを見て例の呪文の真似をしている外国人もいます。(笑)
それで勇気百倍 〜〜 途中から舞台に上がってラジオ体操をしながら靴、靴下、ズボン、上着と順々に脱ぎ捨て、帽子をとると作務衣姿の勝丸に変身 〜〜 最後の〈深呼吸〉が終わるとその機を逃さず、〈忘却〉止めの呪文を「キュ!キュ、キュ――!」とかけました!(笑)

会場が白けてしまったらどうしよう 〜〜 と思っていましたが、この(映像を被りながらの)パフォーマンスでかなり盛り上がったようなので、ホッと胸を撫で下ろしたという次第です。

最後になりましたが、
関係者の皆様、そして作品を観て下さった観客の皆様に、心から感謝致します。


bW7 2003,10.5  様々な、秋たけなわ ――!

時の経つのは早いもので、暑いの寒いのといっているうちにもう10月 〜〜 様々な秋の真っ最中です。

生垣脇に咲く、マンジュシャゲとシュウメイギク

不揃いの葡萄の実

先ずは味覚の秋 〜〜 もう何度も触れてきましたが、我が家の庭には2本の葡萄の木(ともに巨峰)があり、今年は30房を成らせました。しかし未だにその収穫には至らず不揃いの葡萄の房 〜〜 またその房の中にも個体差が生じ、熟した粒は頗る美味しいのですが、青い粒も沢山残っていてとてもスーパーに並べられた巨峰には太刀打ち出来ません。(笑)

そこで神奈川県農業総合試験場に電話をして訊いてみたところ、どうも剪定の仕方に問題があったようです。

手持ちの本には、蔓を放置しておくと養分が枝や葉にいき、実の方に回らなくなるとあったのですが、その剪定の度合いが解らず、結果としては蔓を切りすぎてしまっていたのです。
また摘房や摘粒もしましたが、その本には葉と粒との量的な関係は載ってはいませんでした。

研究員の話では、(秋には)葉からの養分が実の方に回ってきて糖分となり色づくので、葉が大切 〜〜 葡萄の実1粒に葉 が1枚必要だということが分りました。また蔓の状態と追肥の関係なども教えて頂いて大変勉強になりました。
来年はこのメモを参考にして、少しでもプロの領域に迫りたいと思っております。ともあれ、気持ちよく応対してくれた研究員の方に、心から感謝 ――!

次は読書の秋 〜〜 パソコンを始めた途端に読書量ががたっと減ってしまいました。多分PCのことで頭が占拠されてしまったためだと思いますが、もうぼくに必要なPC技術は大体分ってきたので、これからは読書にも少しは時間をさかなければと思っております。

そこで今し方ぶらりと本屋にいってきたのですが、「声を出して読みたい日本語」斎藤孝著:草思社)という本が目に留まりました。滑舌(かつぜつ)に難のあるぼくにはうってつけのように思えたのでレジにゆくと、そのカウンターに「詩をポケットに」(NHKライブラリー)という文庫本が平積みになっていて、著者はぼくが敬愛する知人の吉増剛造でした。

あ、これは正に天の囁きだと躊躇なくその2冊を買い求めて、今それをぺらぺらと捲っていたところです。

「声を出して読みたい日本語」の方は、既に知っている名文の集合体ですが、そのタイトル通り、暗唱もしくは朗誦することをねらいとして編んだもの〜〜、散歩コースのひとつである淺川(多摩川の支流)の土手で大声を張り上げるには申し分のない本です。

「詩をポケットに」の方は、萩原朔太郎の「孤独」を初めとする(表紙に載っている詩人たちの)魅力的な現代詩に、吉増がその独特の感性で(作者の心の奥底に)迫る詩論でした。

著者のこの本に注ぎ込む意気込みは、「こんな本が出来ることになろうとは、……という思いがけないあたらしい空気、その空気にふれて、“この本がわたくしのはじめての本”と囁く声が、何処からか聞こえてきていました」というその序文からも伺われ、ぼくの〈読書の秋〉に最適の本だと思っています。

そして映像作品鑑賞の秋 〜〜 先日吉本直樹『エコノミークラス』を下北沢のトリウッドという座席50ほどの小さな劇場で観てきました。
彼はぼくの作品を手伝ってくれていたので、観ないわけにはゆくまいと思って出かけたのですが、予想に反して
(笑)実に面白い作品でした!

それは、役者になりたい女と映像作家(作者が出演)との関係が軸になっていて、そこにいろいろなドキュメンタリータッチのシーンが出てきたり、劇的なシーンが出てきたりする構成で、それ自体は実験映画としては決して目新しい構成法だとはいえませんが、何故かとてもユニークでユーモラスなのです。

特にその2人の室内でのやりとりは抜群 〜〜 これはプロの脚本家には計算できない設定だと思いました(また2人が言い争うところの演技が実に良いのです)
多分それは、彼の体験を再現したのだと臆測していますが、今度会った時に確かなところを訊いてみようと思っております。

この「エコノミークラス」は、10月8日(水)〜10日(金)に再上映がありますので、この洒落た劇場・トリウッドの偵察を兼ねて行かれてみては如何でしょうか ――!

最後の秋は、山形の秋 〜〜 「山形国際ドキュメンタリー映画祭」&国文祭の「ドキュメンタリー映画フェスティバル」の開催日まで、遂に1週間を割りました。
ぼくが講師のひとりである国文際の「映像制作ワークショップ」 〜〜 その受持ちの2チームから先日最新の〈編集テープ〉が送られてきましたが、8月の試写で観た時よりもずっと良くなっていてホッとしています。

『KNOCK』は、近藤陽子柘植成文植松研太郎の3人編制で、全員が東北芸工大生 〜〜 これは劇構成の作品ですが、この「ワークショップ」の目的が、山形から優れた映像クリエータを輩出させるということなので許可しました。
内容は、若者たちの自己存在に対する実践哲学で、最近観た映画の中では1番印象に残った作品です。

『きょくぶしかん』は、高木寿保佐藤奈穂子(社会人)岡崎詩おり大沼洋美小川知宏村山秀明(社会人)矢作喜夫(社会人)の7名編制で、社会人以外はこちらも全員が東北芸工大生です。
内容は、高木小班が取り壊されるジャズ喫茶への想いを、佐藤小班が閉館される映画館への想いをドキュメントし、その2つが絡み合って展開するという構造の、ユニークなパーソナル・ドキュメンタリーです。

他に、小口詩子講師担当の『手に手に』『晩夏ニ踊レ』土屋 豊講師担当の『Lunch Box』『国境を越えて』加藤 到講師担当の『元気をくれるから』の5作品があり、これら7作品と対決する若手映像作家の話題作10作品、更に講師たちも自作を引っ提げて参戦 〜〜 熱い、恐い、〈山形の秋〉になると思います ――!(笑)(敬称略)


bW6 2003,9.17  夏秋逆転 ― 猛暑襲来

冷夏といわれた今年ですが、9月に入って〔猛暑襲来〕、更に〔猛虎襲来〕と騒がれた我が阪神タイガースの優勝 ―― その2つが重なり、暑さと熱さとで「Hot Hotのおでんさん」 〜〜 です。(笑)

それは18年振りの優勝でしたが、選手たちは浮かれずに翌日の試合もばっちり決めて頼もしい限り、これなら必ず日本シリーズも制して日本一となる筈です!

それにしてもチームが一丸となって手に入れた優勝なので、難しいのは最高殊勲選手の選出です。前半の功労者は矢野捕手だと思いますが、全試合フル出場の金本・赤星も凄いし、現在首位打者である今岡も忘れることは出来ません。しかし、ローティションを崩さずに17勝を挙げたエース・井川 〜〜 20勝したら文句なく彼にやりたいですね。

でも、あの〔駄目虎〕をこの〔猛虎〕に変身させたのは、やはり星野監督の戦術 〜〜 今日の「ニッカン・スポーツ」には「夢への仙術」という連載記事が載っていましたが、それにしても彼は粋だねェ 〜〜 スポーツ紙5紙に身銭を切って全面広告、ファンへの感謝の気持ちをこういった形で表すなんて、表現者としてもなかなかの前衛 ―― 正に〔前衛仙術〕です!(笑)

さて、友人のNERUTON GOOこと石冢雄大氏が待望の小説「ナイチンゲール カンパニー」(出版社:アーテストハウス)を上梓しました。
帯には「謀略小説+情報小説の興奮」とありますが、船戸与一とも高村 薫ともまた違う、これまでにない領域に踏み出した新しい小説 〜〜 北朝鮮、ロシア、日本を舞台に国家の転覆を企てているのは何と外務、そして警察の高官 …… !

ともあれ、極東地域に現在進行形の形で展開するこの不気味な物語は、著者が長い雑誌記者時代を経て、会社経営、専門学校講師、IT企業役員、広告会社顧問などを歴任 〜〜 そこで得た生の知識と、膨大な読書量とがなければ決して生れなかった傑作 ―― お勧め致します。

お勧めの2つ目は、那田尚史氏のHPに連載されている「映像批評/書評」 〜〜 彼は実験映像の研究者ですが、いま小津安二郎や清水 宏などの昔の作品にも力を入れており、紙面の前半は話の粗筋、後半は批評と、映画を観てない人にも分るように工夫されていて(なかなか観られない作品なので)大変勉強になります。


bW5 2003,8.23  山形国文祭の「ドキュメンタリー映画フェスティバル」

今日は久し振りに真夏の太陽が帰ってきましたが、異常気象が続く今年は、これから本格的な夏になるのか、はたまた暦通りこのまま秋に入ってしまうのか 〜〜 全く予測がつきません。

ぼくとしては、いまIFサマースクール〔16o講座〕の最中なので、気がかりなのはその天気 〜〜 (この講座は2クラスあって)奥山順市さんが教えている〔夜クラス〕は雨の為にロケは中止で、室内撮影になったそうです。
ぼくの〔昼クラス〕のロケは25日と26日、週間予報を見ると曇りマークになっていましたが、何とか外で撮らせてやりたい 〜〜 と、念じています。

さて、今年は山形国際ドキュメンタリー映画祭の他に、山形国民文化祭が開催される年です。
その国文祭の企画のひとつに、「国民文化祭やまがた・2003 ドキュメンタリー映画フェスティバル」があり、そこで山形市民を対象に昨年の秋から続けられてきた「映像ワークショップ」の作品が公開されます。(山形国際ドキュメンタリー映画祭としては、これまでの「日本パノラマ」として位置付けしているようです)

「山形から優れた映像クリエーターを!」という目的で始まったこの「ワークショップ」 〜〜 映像研究者の村山匡一郎がコーディネーターで、映像作家の土屋 豊加藤 到小口詩子金井 勝が受持ったクルーを指導 ――、
土屋組は、『Lunch Box』『国境を越えて』
加藤組は、『元気をくれるから』
小口組は、『たとえば私の手が』『晩夏ニ踊レ』
金井組は、『きょくぶしかん』『男なら拳で語れ』〜〜の7作品がいま誕生しつつあります。(『男なら拳で語れ』はフィクションですが、商業映画の真似事ではないものをという条件で許可されました)

10月10日から13日まで、遊学館(山形県生涯学習センター)で行われるこの「ドキュメンタリー映画フェスティバル」 ―― プログラムは上記7作品と、若手映像作家の話題作とを絡ませ、上映後には夫々の作者が壇上に上って激しいバトルを展開 〜〜 となる筈ですので楽しみにしていて下さい ――!

また別枠で講師陣の作品も上映され、ぼくは最新作『スーパードキュメンタリー前衛仙術』と、処女作『無人列島』とを引っ提げて参戦 ―― この夏は冷夏でしたが、秋は山形が熱く燃えます!(笑)


※ 速報!
その
国民文化祭・やまがた2003ドキュメンタリー映画フェスティバル「日本大展望(パノラマ)」のプラグラムが、只今決定したそうです――!

会場:遊学館(山形県生涯学習センター)2Fホール(約300席) 入場料:無料

10/10(金)
10:30〜開会セレモニー
10:45〜『無人列島』金井勝/56分
12:10〜『オフィーリアの愛読書』小口詩子/90分
13:55〜『加藤到短編セレクション』加藤到/80分
15:30〜『新しい神様』土屋豊/99分

10/11(土)
10:30〜『元気をくれるから』ヤマガタ作品/約23分  『えてがみ』内田伸輝/95分
13:30〜『Lunch Box』ヤマガタ作品/約15分  『朝昼晩ごはん』まんまさちこ/18分  『カレーライスの女たち』松江哲明/30分
15:00〜『一人デモ』安藤久魚/94分
17:00〜『晩夏ニ踊レ』ヤマガタ作品/約30分  『私(うち)をせかさんといて!―ある不登校少女の「記録」―』/渡辺崇/45分
18:45〜『きょくぶしかん』ヤマガタ作品/約50分  『川口で生きろよ!』/村上賢司/30

10/12(日)
10:30〜『Knock』(元のタイトルは「男なら拳で語れ」)ヤマガタ作品/約50分  『アントニオの告白』本多宗一郎/57分
13:30〜『ニュータウン物語』本田孝義/103分
15:45〜『国境を越えて』ヤマガタ作品/約30分  『戦争が終って僕らは生まれた』荒木真登、マティス・ニューバーガー共同監督/79分
18:00〜『手に手に』ヤマガタ作品/約35分  『エロティック・煩悩ガール』山内洋子/20分 『Father Complex』 / 佐俣由美/27分
19:50〜シンポジウム(仮称)

10/13(祝)
10:30〜『PEEP"TV"SHOW』土屋豊新作/約100分
13:30〜『KAISEKI料理』加藤到、櫻井篤史共同監督 新作/16分
14:20〜『スーパードキュメンタリー前衛仙術』金井勝新作/33分
15:30〜閉会セレモニー

※ プログラムに多少の変動があるかも知れません。


bW4 2003,8.10  VAIOがやられた――!

台風は通り抜けましたが、我が心は鬱々としてなかなか晴れそうにもありません。
その主な原因は2台のパソコン 〜〜 HPなどに使用しているSOTEC〔Micro PC STATION 433D〕と、ビデオ編集などに使っているVAIO〔PCV−J20V7BP〕です。

左:VAIO 右:SOTEC

SOTECの方は1999年の夏に購入したのでもう丸4年になります。それ故に何となくヨタヨタしていて何時壊れても可笑しくない状態です。(笑)
が、先に壊れたのはVAIOの方 〜〜 2001年秋の購入ですからまだ2年も経ってはいませんが、先日原因不明のトラブルが発生し、サービスステーションの指示に従って〔システム リカバリ〕を行いましたが完治しませんでした ――!

このVAIOでは『スーパードキュメンタリー前衛仙術』を編集しましたが、OL(オーバーラップ)などのエフェクトやタイトル挿入時に(僅かですが)ファッと明るさが変わり不快でした。同じVAIOを使っている徳本直之(映像作家)もそのことで悩んでいましたのでぼくのPCだけの問題ではないのだと思います。

兎も角、ぼくにとって不必要な機能が多すぎます ――!
そこでビデオ編集に必要なものだけで構成したシンプルな編集専用のPCを
吉本直聞(『映像作家:『前衛仙術』の特撮)あたりに作ってもらい、このVAIOは修理に出してからあのヨタヨタSOTECの後釜として(HP用に)使おうかなとも考えています。

しかしVAIO〔PCV−J20V7BP〕のOSは悪評高いMeで、その上にぼくのHP〔映像万華〕のソフトはWindows98にしかついていない〔FrontPage Express〕ですのでHPの引越しは面倒になりそうです。全く、Windowsのこの中途半端なサービスには怒りたくなります!

PCは(OSを含めてハードもソフトも)まだまだ完成途上の段階にあるにもかかわらず、大手PCメーカーはあれもこれもと、ごちゃごちゃ詰め込んできますので、ぼくのような老人ユーザーは大変に苦労させられています――!(笑)
そこでゆくゆくはHP用のPCの方も大手メーカーとはおさらば 〜〜 HPの他はインターネットとメールに関することが出来ればそれで十分なので、シンプルで丈夫なPCを作ってもらうつもりです。

ともあれ今日(10日)の午後に吉本君が来宅しますので、いろいろアドバイスを伺いながら今後のPC問題を考えていきたいと思っております……。(笑)

追伸
那田尚史さんのPCも先日ハードディスクがクラッシュしたそうです。


bW3 2003,7.31  青原さとし(=慧水)と、『土徳』の劇場公開

長い間、燦燦と輝く太陽にも紺碧の空にもお目にかかれませんでしたが、そろそろ梅雨も明けそうなのでほっとしています。

さて、この映像万華には〔この人を見よ!〕というコーナーがあります。
最初は〔そこにこの人あり〕という見出しでIFなど、ぼくが講師をしている学校の卒業生のその後を連載しようと始めたのですが、余り情報が入りませんでしたので、我が道をゆく特異な存在の人たちのコーナーに変えました。

そんなわけで、最初に取上げたIF10期・青原慧水(=青原さとし)がちょっと場違いな感じになっていましたが、今年『土徳(どとく) −焼け跡地に生かされて』というドキュメンタリーを発表 〜〜 これで違和感がなくなったというわけです。

IFを卒業すると青原は、民俗映像の泰斗・姫田忠義が所長を務める〔民族文化映像研究所〕に入社 〜〜 そんな彼から2000年の1月にETV特集 日本・定点の記録40年』のお報せ状が届きます。

その第1回目は『焼畑に生きる村−高知県椿山』、第2回目は『海が生んだ家族・寝屋子−三重県答志島』、第3回目は『山に生かされた人々−越後奥三面』で、何れも40年間定点取材しており、姫田所長のその作家魂に脱帽しました。

青原はこれらの作品にも編集などで関わっていますが、(彼自身)演出家としてTVドキュメンタリーや博物館映像などをそこで沢山手掛けてきています。

しかしその〔民族文化映像研究所〕を昨年退社 〜〜 暇をみつけては撮りためてきた郷里・広島の映像を纏める為で、それがこのパーソナル・ドキュメンタリー『土徳(どとく)−焼け跡地に生かされて』なのです。

作品内容については〔上映会情報〕や彼のHP〔土徳〕にアクセスして頂くことに致しますが、〔民族文化映像研究所〕で会得した民俗映像の魂と、IFで吹き込まれた前衛精神とが実にユニークな形で結合していました。
中沢新一(宗教人類学)佐藤忠男(映画評論家)もこの作品を高く評価しています!

また嬉しいことに、IF同級生の野上純嗣『すみつぐのつぐ』でIFFグランプリ)原田一平『連続四辺形』でIFF入賞)もいろんな形で協力 〜〜 ぼくもこの劇場公開の成功を心より念じております!(敬称略)


『土徳
(どとく) −焼け跡地に生かされて』
東京公開はシネマ・下北沢
原爆の日をまたいだ終戦記念日までの 8月
2日(土)〜15日(金)
モーニング(10時30分)+レイトショー(19時30分)

決して堅苦しい作品ではありませんので、ご高覧のほど宜しくお願い致します!


bW2 2003,7.23  雨が続く日々に〜〜

今年の梅雨は例年になく長いような気がしますが、気のせいでしょうかね〜〜 が、それでも我が阪神タイガースはオールスター後も快調なので鬱陶しさを和らげてくれています ―― 感謝!

さて、年を取るとやはり気になるのが健康のことです。
そこで毎日40〜50分の散歩と、6キロのダンベル振りを行っていますが、その効果で体脂肪率はかなり減りました。

ダンベル振りは10年程前からで、五十肩になって腕が上がらず医者に行ったところ、ダンベルの前後振りと、円形振りとを教えられました。
それに幾つかの振り方を加えてやっているうちに五十肩も治り、その副産物のような形で衰えかけていた筋肉も甦ってきました。

この映像万華への訪問者の殆んどは若い人だと思いますが、侮ってはいけません 〜〜 そのダンベル振りのお陰で腕相撲も強くなり、若い人にも負けませんよ――!(笑)

それにしても、(梅雨とはいえ)こう毎日雨の日が続くとさすがに気が滅入ります。そこで先日栃木の山奥にある女夫淵(みょうとぶち)温泉に行ってきました。
鬼怒川の本流を遡ったところにある一軒宿の温泉で、谷川の縁には七福神の七湯を初めとする十数個の湯船があって心身を癒してくれます。

その湯船ですが、2つの女性専用以外はみな混浴で、バスタオルを捲きつけたうら若き女性も入ってきますので、温泉の物理的効果(温熱作用、水圧作用、浮力作用)、化学的効果(溶けている成分による化学的作用)の他に、目の保養にもなるのです。(笑)

しかし温泉旅行の最大の効力は、生活の場から離れて大自然の中に身を置く転地の効果で、ストレス解消に最も有効です。

そこで2日目には女夫淵温泉から林道を2時間近く登ったところにある奥鬼怒温泉郷の加仁湯(かにゆ)まで足を延ばすことにしました。

小雨が降ったり止んだりの山道でしたが、道の辺にはひっそりと草花が咲いていて心を和ませてくれます。

ヨツバヒヨドリ ミヤマウツボグサ

植物を観察しながら行くと、木の間から建物が見えてきました 〜〜 秘湯・加仁湯です。
早速、入浴料500円を払って露天風呂へ 〜〜 大きな板に「含硫黄ナトリウム塩化物炭酸水素塩温泉」とあり、乳白色のお湯が満ち満ちていました。

加仁湯の露天風呂

肌に柔らかいお湯で、効能は神経痛、糖尿病、皮膚病など 〜〜 ともあれ、植物観察と日課の散歩とを兼ねた、気持ちのよい温泉めぐりでした。


bW1 2003,7.9  明け方、こんな夢を見た

もう『聖なる劇場』『スーパードキュメンタリー前衛仙術』を御覧の方はご存知だと思いますが、ぼくは子供の頃から動植物が好きで、庭には様々な花が咲き、池も小川もあるので野鳥や昆虫などがやってきて心を癒してくれます。

その植物ですが、ぼくが植えたものの他に、小鳥たちが運んできた種から発芽したのだと思われるものもあります。
写真は生垣近くの植物群で、(ぼくが植えた)バラとクチナシも見えますが、中央の花は自生のヤブカンゾウ、その花の左上にちょこんと顔を出している葉が、植えた筈のないオオバです。

昨年『前衛仙術』で大活躍してくれた葡萄の方は、甘味を多くする為に20房近くを〈摘房〉し、1房の中でもかなりの粒を〈摘粒〉 〜〜 虫除けの為に袋かけもしました。
その数丁度30 〜〜 袋の裾には隙間があって、そこから覗くと日増しに実が大きくなってゆくのが分り、秋が大いに楽しみです。

さて、ぼくはよく夢を見ます。
今朝見た夢に吉兆の気配を感じましたので記しておこうと思います。

ぼくたち夫婦は温泉好きで、3ヶ月に1度の割合で行っていますが、その夢も山奥の鄙びた温泉郷が舞台 〜〜 だが、予約を取って出掛けてみると、パンフレットに載っていた写真とは大違いで、あのガウディの教会を彷彿とさせるような不思議な建物が大空に向って聳え立っていたのです!

恐る恐る妻と一緒に玄関のドアを押すと、愛想の良い女が飛び出てきてご案内 〜〜 螺旋状のエスカレーターに乗せられ最上階へと向かいます。
部屋に着くと、その女は大声を張り上げて号令をかけます 〜〜 すると若い娘たちが今まで見たこともないご馳走を次々と運んできました。

お金のことも心配になったのでびくついていると、もみ手をしながら小太りの男が入ってきて、「ご心配ご無用 〜〜 これはこちらのサービスですからご遠慮なくどんどん召し上がって下さい」と愛想を振り撒きます。

何ゆえのサービスかと訝っていると、男は名刺を出して「私はこのホテルの経営者ですが、手狭になりましたので裏にもう一棟建てたいのですが、その土地を調べてみましたらあなた様の名義になっておりました。これも何かのご縁 〜〜 どうかあの土地を譲って下さい 〜〜」と、訳の分らないことをいいだしました。

勿論、こんな山奥に土地など持っていないので妻と顔を見合わせていると、その男は(何時の間にか)あの佐藤重臣さん(元・雑誌「映画評論」編集長)で、クァハ、クァハ、ファ、ファ、ファ 〜〜 と豪快に笑い、「それでは、その土地を見に行きましょうか――!」と、目の前のご馳走のことはそっちのけで誘います。

何で、重臣さんが温泉ホテルの社長? 〜〜 と思いながらも後についてゆくと、ぼくの土地(?)ではもう建設の下準備らしきものが始まっていて、手押し車に泥を載せて運んでいる二人の青年の姿が目に入ります。

重臣社長は一瞬気まずそうな顔をつくりましたが、直ぐに例のクァハ、クァハ、ファ、ファ、ファ 〜〜と笑って、「ご承諾はまだ頂いておりませんが、何せ急いでおりますので事後承諾という形になって、ご勘弁のほど 〜〜 まぁ、その為にあなたの良く知る青年を雇ったのですよ〜〜」と、これまたわけの分ない言い訳を始めました。

近づいて青年たちの顔を見ると、二人ともぼくが関わっているIF付属映像研究所の卒業生で、アニメーションで独自の世界を拓きつつあるK君と、ぼくの作品を手伝ってくれたことのあるY君でした。

話を訊いてみると、映像づくりの傍ら彼らは小説も書いるのだそうで、既にY君は直木賞を受賞していて、次の作品の準備を始めていたら重臣社長からお声が掛かり、君を誘って一週間前に来て豪遊 〜〜 そのお礼にこの仕事を引き受けたのだそうです。

小説が余り読まれなくなった時代とはいえ、直木賞は大変な賞です。
その直木賞を、普段余り小説など読んでもいなそうな君がとっていたとはどうしても信じられず、「ご冗談を〜〜」と鼻の先で笑うと、横から君が「それは本当のことですよ〜〜」とごく普通のことのようにいいます。

するとその時、君の携帯がなりました。
何度か「ハイ、ハイ」を繰返していた彼が尻のポケットに携帯を押し込み、「ぼくの方は芥川賞に決まったみたい」と、いとも簡単にいいました。

辺りにはもう重臣社長も、妻の姿もなく、驚いているのはぼくひとりだけで 〜〜 何事もなかったように泥を満載した手押し車を夫々が押して、二人の影は遠ざかってゆきました。

〜〜 そこで目が覚めたのですが、
それは多分、映像関係で名を成した人たちの他に、音楽や写真など幅広いジャンルで活躍しているIF卒業生を知ってはいても、まだ文学界に進出した者がいるとは聞いていないので、その辺りのことが脳裏の何処かに引っ掛かっていて、夢となって噴出したのかも知れません。

ともあれ、朝の夢は正夢だといいますから、これは何かの吉兆だと思います ――!


bW0 2003,6.25  創る人と観る人

先日、見逃していた園子温監督の『うつしみ』を渋谷のアップリンクで観てきました。
これは愛知芸術文化センターの’99年度企画作品で、写真家・荒木経惟舞踏家・麿赤児、デザイナー・アラカワシンイチロウの出演もあって公開当初はかなり話題になった作品です。

内容は、園子温による劇映画『息をつめて走りぬけろ!』(のリハーサル?)のパートが主軸となっていて、時々荒木の撮影現場や麿の振付、アラカワのパリ・コレ準備風景などのシーンが挿入されるといった構成でした。
その4つのパートですが、〈挿入〉ではなく〈絡み〉を持たせるべきだったと思いました 〜〜 これではスケジュールの〈都合〉が見えてきてしまいます。

それでも、『息をつめて走りぬけろ!』のパートには過激なシーンが沢山あって見応えがありました。
街を駆け抜けてきた女子高生(
澤田由紀子)が、おでん屋の主(鈴木卓爾)に、「私とシテ下さい〜〜」で始まる素っ頓狂なラブ・ストーリーで、主演の澤田と卓爾の役者根性には心を打たれます。特に澤田の走りは爽快そのもの、また等身大に造ったハチ公も効いていました。

さて園子温ですが、先ごろ買った文藝別冊〈寺山修司〉には「寺山の後継だと言えるのは園子温一人 〜〜」とありましたし、昨年公開された『自殺サークル』もヒットして更に名を馳せているそうなので、座れるかどうか心配でした 〜〜 が、何と、客はぼくひとりだったのでびっくり 〜〜!

映画全盛期の昔には、〈創る人=プロ〉と〈観る人〉は分かれていましたが、デジタルビデオとパソコン編集の組み合わせにより、誰でもが映像作品を創れる時代となりました。その結果、玉石混合 〜〜 沢山の作品が誕生しますが、『うつしみ』のようなかなり重要な実験的作品でも時が経つともう人は集まりません……。

〈創る人〉は同時に〈観る人〉にならなければ、自分の創ろうとする作品のレベルが分りませんので是非他人の気になる作品は観るようにして下さい!
そういう環境をみんなで作っていかなければ、〈個人映像・実験映像〉の未来はありませんので ……!

といっても、実際には沢山上映会がありますのでその全てを網羅するわけにはなかなかいきません。
ぼくの場合には、ぼくの作品を観にきてくれた作家の作品は出来うる限り観るようにしています。多くの映像作家もほぼ同じような考えだと思いますので、
〈他人の作品を観ない人は、自分の作品も観て貰えない〉と覚悟した方がよいと思いますよ ――!

そこで、IF卒業生が中心となった〈中野の中の上映会〉が6月28日(土)にありますので、どうぞ宜しくお願い致します。(しかしぼくはIFの授業なので、Bプロに間に合えば〜〜と思っております)


bV9 2003,6.12  阪神タイガースの快進撃と、うきうき散歩

うじうじしててもしょうがないからと、還暦を過ぎてから〈プラス思考〉に切替えました 〜〜 が、根が〈厭世主義者〉なのでそれが寝起きに現れ、暫くの間は布団の中で鬱々とした時間を過ごすのが常となっています。
が、今年はその鬱々の時間が少し短くなりました。朦朧とした不快感の中に一条の光 ―― 「そういえば昨日も勝ったな〜〜」と思い出し、寝床から這い出すことが出来るのです。

その「勝ったな〜〜」が何かといえば、我が阪神タイガースの勝利のことで、その快進撃に助けられているという次第です。

ぼくは、昨日今日の阪神ファンとはわけが違います!
神奈川県の片田舎で生まれ育ったので当然最初は巨人ファンでしたが、小学6年の時に友だちのお兄さんに連れられて集落の少年野球チームの仲間と一緒に後楽園球場で巨人・阪神戦を観戦しました。その時に見たあの藤村富美男の豪快なスイング 〜〜 その物干竿(彼は長いバットを愛用していた)スイングが忘れられず、遂に村でただひとりの熱狂的な阪神ファンとなったというわけなのです。

ご承知のように、我が阪神タイガースは長い間低迷し、情けない思いをさせられ続けてきましたが、今年は纏めてその鬱憤を晴らす時です ―― セ界制覇は勿論のこと、必ず日本一に輝くものと信じております!!

そう思うと気分も高揚し、先ず「東京新聞」のスポーツ欄に目を通して、更に詳しい情報を得る為にモノレール駅の売店でタイガースの機関紙・「デイリースポーツ」を買って喫茶店へ ―― そこでミラノサンドBを食べながら各選手の活躍をうきうきとした気分で読むというのがこの頃の日課です。(笑)

6月12日の「デイリースポーツ」

そのうきうき気分に浸りながら、次は散歩 〜〜 ぼくには散歩道が幾つかありますが、その第1は高幡不動尊で、いま「あじさいまつり」の最中 ―― 境内とその裏山に植えられたおよそ7500株の紫陽花は壮観そのものです。
咲き乱れる花々に覆われた、(境内との)標高差およそ百メートルの裏山 〜〜 そこには弘法大師の石像が八十八体祀られていて、その石像巡りはフィトンチッドが満ち溢れた実に清々しい散歩道となっているのです。

ともあれ、歩くことが〈健康の基〉ですので、皆さんも毎日30〜40分は歩きましょう ――!
そして、我が阪神タイガースの日本一を、信じていて下さい ――!!

(明日は山形へ入り、13日〜14日が 国文祭・ワークショップの合宿 〜〜 その完成講評ですが、楽しみでもあり、不安でもあります)


bV8 2003,6.4  葡萄が三十房余り実をつけました

拙作・『スーパードキュメンタリー 前衛仙術』をご高覧頂き有難うございました。
また、ぼくの〈別人・勝丸〉と〈気の交換やりとり〉を演じてくれた植物たちにも大いに感謝しております。(笑)

なかでも木通(アケビ)と葡萄の演技(?)は特に好評でしたが、去年13個も稔った木通は今年は零 〜〜 シャイな彼女にはあの出演が堪えたのでしょうか……?
一方陽気な性質(タチ)の葡萄はノリノリで、一昨年植えた新人も加わり何と2本で40〜50房 〜〜 が、余り実をつけすぎると甘味が薄れるということなので10房余りを〈摘房〉しました。ともあれ、今年は葡萄の豊作となりそうなので、秋の収穫が楽しみです。

沢山房をつけた「巨峰」

さて、ぼくにとって秋といえば、山形 ―― 今年は〈山形国際ドキュメンタリー映画祭〉の年ですが、またそれと重なる形で〈山形国文祭〉が開催されます。
そのなかに、〈国民文化祭・やまがた2003「ドキュメンタリー映画フェスティバル」〉が組み込まれていて、山形から映像クリエーターを育成する〈ワークショップ〉が昨年秋からスタートとしています。(講師陣は村山匡一郎、小口詩子、土屋豊、加藤到の諸氏と金井勝)

受講生は山形市在住の人たちで、2ヶ月に1度の割合で合宿(山形で1泊2日)を行ってアドバイスをしていますが、実際には8班に分かれた各スタッフが夫々に作業を進めており、この14日〜15日の合宿はその〈完成講評〉です。

ぼくは2つの班を受持っており、その連絡は主にMLですので歯痒さもあります。
スタッフの自主性は尊重しなければならないのですが、作品づくりには〈悪しき民主主義〉は禁物です。
彼らだけの会議で内容もしばしば変更 〜〜 良く変われば良いのですが、スタッフからの報告に愕然とする時もあります……!

ともあれ、8月3日には加藤氏が助教授をしている東北芸術工科大学で〈特別試写会〉があり、10月10日〜13日は本番公開となる〈国文祭・ドキュメンタリー映画フェスティバル〉です。
8作品全部が問題作とはいかないと思いますが、あなたの脳裏に素晴らしい〈痕跡〉を残す作品も必ず生まれてくる筈ですので、ご期待下さい――!


bV7 2003,5.13 新作とぼくとの間に――! 

IFF2003の〈東京&横浜上映〉が終了しました。
ぼくの『スーパードキュメンタリー前衛仙術』はなかなかの好評で、MONSHIRO姫の応援歌や、鈴木志郎康さん那田尚史さんのHPなどでも取上げられております。(☆ 追加 三木淑生氏のHP

またぼくが教えている学校の卒業生からもメールを頂きました。これはぼくの授業内容とも関係していますので、受講生の皆さんに読んで頂ければと思います。

「スーパードキュメンタリー前衛仙術」楽しませていただきました。
とともに大いに勉強させていただきました。
映像の力、音の力、言葉の力。それだけではなく、「金井勝」という一人の
映像作家の並々ならぬエネルギーを感じ、お腹のあたりが熱くなりました。
「映画は観手との戦いだ」と先生の言葉を思い出し、「戦術」というものと、
そしてそれ以上に大切なのは、自分のありったけの力を作品のエネルギー
に注入し、上映と共にそのエネルギーを観手に浴びせかけなくてはならない
のだと感じました。
「まだまだ!まだまだ!まだまだ!」そんな金井先生のお言葉が今まさに
聞こえてきそうですが、
僕もいつかは!と心に秘め頑張っていきたいと思っています。 (T 生)

5月13日からはIFFの〈京都上映〉、6月4日からは〈福岡上映〉が始まりますので、西国の方々はお見逃しのないよう宜しくお願い致します。

しかし、浮かれてはおられません 〜〜 この〈東京&横浜上映〉の間に智女の父が、そしてぼくが仲人をした佐藤芳幸さん(元・キネ旬社員)の奥さんが相次いで他界したのです。

義父は享年80歳で長いこと入退院を繰返しておりましたので覚悟は出来ておりましたが、佐藤玲子さんの場合は何も知らされていなかったので愕然としました 〜〜。
彼女はものしずかな麗人で、最初に会った時「市井にもこんな美人が 〜〜」 と、大映育ちのぼくをして驚かせたほど、後に神奈川を世界にPRする短編映画に出演して貰っております。
美人薄命といいますが …… 享年51歳でした。

前号で記した桑名さんから始まって、丁度半月の間に3人 〜〜 還暦を過ぎてからはオプチミストに変身した筈でしたが〈鬱気〉に襲われてしまい、作品制作の為に滞っていた様々なことにも手付かずの有様でした。

だが何時までもぼんやりしているわけにはいきません ――。
そこで気分転換の為に、先日多摩川の河口に野鳥観察に出掛けました。この時期には旅鳥の鴫や千鳥が沢山飛来している筈ですが、着いた時には既に上潮でキアシシギの群などが見られただけでした。
それでも汽水域の川風はまた格別で、やっと気分が落着いてきました。


bV6 2003,4.24  桑名平治逝く――!

新作で疲れましたので湯河原の湯で心身のリフレッシュ 〜〜 と出掛けましたが、乗換駅で滅多にかかってこない携帯が鳴りました。
カメラマンの細井靖明からのもので、桑名平治さんの死を知らされました ――!

桑名さんは大正生れの実にユニークなライトマンで、新理研映画社から神奈川ニュース映画協会へと移ってきていて、ぼくの方は『無人列島』のカメラマン・鈴木正美がそこの社員だった関係で呼ばれ、自主制作の合間にカメラマンとして働くようになり、桑名さんと出会ったというわけです。

当時の協会の製作部長は(故)吉田和雄で、ロマンチィストの彼は岩波映画社と肩を並べようと情熱を燃やし、記録映画の重鎮・野田真吉、そして永野千秋小笠原清などのドキュメンタリー作家を集めておりました。そこに(故)城之内元晴をぼくが誘ったので熱気は更に高まり刺激的な仕事場となってゆきます。
すると、必然的に助監督や撮影助手にも優秀な若者が大勢集まってきて、何か不思議な〈勢い〉が生まれてゆきます。

『GOOD−BYE』や『王国』のカメラマン・亘 真幸、『時が乱吹く』のカメラマン・細井靖明(彼は社員)も当時はまだ撮影助手で、『城門の蟹』(映画化はなりませんでしたが)の共同シナリオのひとり・青戸隆明も撮影助手でした。
若い彼らにとって桑名さんは(銭形)平次ならぬ〈(桑名)平治親分〉であり、ぼくや城之内にとっては話のわかる〈おじき〉的な存在で、飲んではよく映画や生き方について語り合いました。

『夢走る』のスナップ:左より細井さん、桑名さん、金井

彼はただのライトマンではありません ―― !
『王国』では時間を盗むスリ集団の親分を好演し、『夢走る』では照明のほかに出演、美術もやってくれました ―― 感謝!
が、驚くべきは還暦の年に撮った彼の処女作『相模幻野考 老人の軍隊手帖』(16mm)で、観客の心の襞に染み込んでゆく作品でした。特に前半の演出は秀逸で、長い間様々な作品でライトを当てながら考えていたのでしょう、演出家たちは穴があったら入りたくなるほど、冴えに冴えておりました!

また桑名さんは文章にも天性の才がありました。
福岡のシネクラブ〈極狂遊民カチカチ山〉が不定期に発行していた個人雑誌〈鷽(うそ)〉の常連執筆者で、なかでも半生を綴った連載・「その頃、あの頃、今日この頃」には舌を巻きました。一見淡々とした文章なのですが、生来のセンスの良さが滲み出た素晴らしいエッセイでした。


湯河原で一泊し、一度家に帰ってから川越へと馳せ参じます。
しめやかに営まれた通夜 〜〜 棺に横たわる桑名平治さんと最期の別れをしましたが、彼は自分の生き方を全うしたという、安らかなお顔でした ―― 合掌。(敬称略)


75 2003,4.17  遂に『スーパードキュメンタリー 前衛仙術』完成す!

長らく〈更新〉が途絶えまして誠に申し訳ありませんでした。
その主な原因は見出しにある新作に没頭していたからですが、何せ初めてのDV作品でしたので様々なトラブルが発生し、心身ともに本当に疲れました。(笑)

新作の内容については、3回にわたった〈兎も角、忙しいのです〉で触れておりますので、後は〈IFF2003〉でご高覧頂きたいと思っております ―― 宜しくお願い致します。

高幡不動尊の裏山で前衛仙術の修業する勝丸

さて、その作品の出来に関してですが ―― 正直にいって、作り手は時間が経たないと判らないものです。それでもフィルムの場合はダビングのあたりで〈感じる〉何かがありますが、DVの場合は完成まで独りで編集をし、〈コマ落ち〉などに神経を尖らせながら100回ぐらい見ることになりますので、どうしても〈新鮮さ〉という点では鈍くなります。

しかし、客観的にみて〈前代未聞の作品〉だといえますので、皆様に失望させるようなことは絶対にないと思っております。
その証拠に 〜〜 というのも変ですが、〈音の調整具合〉を
鈴木志郎康さんにみて頂きましたが、作品そのものに関しても好評でした。
出演者の
小野塚直美さん、特殊技術の吉本直聞(映像作家) に心から感謝致します。

これは余談ですが、
DV作品は、〈終止符〉を何処で打つか 〜〜 それもストレスの原因になりますね。一昨日IFへ完成DVを提出しましたが、あと2ヶ所ばかり手直ししたいところが出てきました。16mm作品ですとぼくの場合は録音スタジオを使っていましたので、そこで作品内容に関してはピリュ−ドが打たれましたが、DVだと直すのもぎりぎりまで可能です。しかしそれを直すと、また他のところが気になってきそうで、何時までたっても〈スッキリ〉せず困ってしまいますね。
(笑)

ともあれ、疲れましたので温泉に行ってきます―― !
温泉から帰りましたら、IF26期〈卒業制作展〉や造形大〈映像芸術V〉の講評などに取り掛かりますので宜しくお願い致します。


bV4 2003,3.4  兎も角、忙しいのです――その3

1月が〈行き〉、2月が〈逃げ〉、〈去る〉という3月も、あっという間に4日目となりました。

〈IFF2003〉の国内招待作品の締切りが2月12日で、『スーパー・ドキュメンタリー 前衛仙術』のminiDV(途中段階)を提出 〜〜 先日その承諾通知を頂きました。
が、2月16日号でも触れましたようにマイクロフォンの選択に失敗 〜〜 毎日リテークとその編集に明け暮れております。

この作品は、映像作家・金井勝がその〈別人〉金井勝丸の現実と妄想とをドキュメントするという構造になっております。
といっても実際には自分が出演し、それを撮るのも自分 (こういってしまうと夢がなくなりますね(笑)) なのですが、これはこれでなかなか大変です。

そのリテークで良くなったシーンは嬉しいのですが、〈音声〉は良くなっても全体の雰囲気が前回より悪い場合もあります。それには納得できませんので撮り直しの撮り直しとなります。(笑)

リテークのリテークで良くなった勝丸の演技 天から舞い降りた二羽の雉鳩〜これはその雛

それでも出演者がぼくひとりの場合ならまだ宜しいのですが、妻の智女が絡んでいるシーンもあります。
その智女ですが、今は彼女の最も忙しい時期と重なっている上に (彼女の) 両親が相次いで入院 〜〜 といった訳でなかなかスケジュールが立ちません。

編集用PCの方もご機嫌を損ねて、〈記号化け〉や〈コマ落ち〉を始めました。
しかしこちらは〈スキャンデスク〉と〈デフラグ〉を怠けていたのが原因だったのでしょう、吉本直聞(映像作家) のアドバイスで何とか解決しました。

しかしまたまた新手の敵が出現 〜〜 IFF提出用のスチール写真の件です。
プリンターはキャノンのBJ F600を使っていますが、作品の中から起こした〈静止画〉は画像が粗く、スチールとしてはチョッと考えてしまいます。
そこで先程PC店に出掛けて下見をしてきましたが、プリンターを最新のものと替えることに決めました。

DV作品は初めてですし、その最初の作品でいきなり大作 (笑) に挑戦ですからこういった様々な問題が発生しても仕方がないと覚悟しておりました。
ともあれ、作品は出来上がったものが全てですので、最後の最後まで頑張ります。ご期待下さい――!

植物の精をしなやかに演じる小野塚さん 吉本君の手助けで空中飛行をする勝丸

そしてまだまだ多忙な日々は続きます。
この後には、〈山形国文祭のワークショップ〉、〈IF第26期卒業制作展〉などが控えているのです。


bV3 2003,2.16  兎も角、忙しいのです――その2

その後もなんだかんだと多忙です。

1月29日は午後からスケジュールが入っていましたので、2日前に舞い込んだ造形大の卒業制作発表会の通知にこれは無理だと思いました。が、プログラムに目をやるとぼくが後期を担当している〈映像芸術V〉の昨年度の受講生の作品が午前中に組まれていたので出掛けてみることにしました。

時間の都合で観られたのは3作だけでしたが、その中に昨年度『分裂抄』でその才能を開花させた河内 洋の作品がありました。
タイトルは『分裂抄2』 〜〜 前作の手作りとは趣をがらりと変えてPCを駆使しておりましたが、これまでに観たことがない作品になっていて衝撃を受けました。
この作品紹介は何れ時間が出来た時に書こうと思っております 〜〜 そういえば2002年度の〈映像芸術V〉の講評も手付かずで 受講生だった皆さん誠に申し訳ありません。もう暫く時間を下さい。

さて、30日から2月1日までは万座温泉 〜〜 いや、多忙といいながら温泉旅行はないのですが、新作『スーパー・ドキュメンタリー 前衛仙術』のスケジュールがいろいろとあって大幅に狂ってしまったという訳です。(笑)

雪深き温泉の郷から帰ってからは撮影と編集で大車輪となりましたが、7日から9日までは山形へ 〜〜 山形国文祭の〈ワークショップ〉と、米沢にいる友人・細井靖明『時が乱吹く』のカメラマン)に会うためです。

その〈ワークショップ〉では2班を受持っており、メール(実際にはML)で連絡を取り合ってきましたが顔がの見えないアドバイスは歯がゆいものです。
スタッフの方でも、迷いや不信感などが生じてきていたようですが、この〈班ごとの個別指導〉で両班ともに気合が入ったと思っております。

一方細井氏の方ですが、彼は横浜と米沢とを行き来していて、米沢では山岳ガイドをしています。
久し振りに見るその顔は、TVドキュメンタリーのプロジューサーやカメラマンをやっていた時よりも更に溌剌としていて安心しました。
そこで『前衛仙術』の粗編集のVHSを観てもらったのですが、彼は『無人列島』以来の傑作になる筈 〜〜 と誉めてくれました。(笑)

しかし家庭用のビデオ装置で観る分にはさしたる支障はありませんが、前日に東北芸工大のプロジェクターで観ているぼくにとっては素直に喜べません。
音のノイズがひどいところがかなりあって、そのシーンを全て撮り直さなければならないのが判っていたからです。

原因は〈外付けマイク〉 〜〜 〈内蔵マイク〉より〈指向性マイク〉の方が良かろうと、ぼくの出演シーンの殆んどそれで撮影しています。
編集の時点で少しはそのノイズを感じてはおりましたが、家のビデオ装置ではさほど気になりませんでしたし、気になったところは既にリテーク済み 〜〜 冷蔵庫など、ノイズを拾いそうなものは全てその電源を抜いたのですが、やはりそのリテークも使ったマイクは〈外付けマイク〉でした。(笑)

そこで確かなことを知る為に、現在プロダクションの経営者で、デジタルビデオに関しては実に詳しい亘 真幸『GOOD−BYE』『王国』のキャメラマン)に訊いてみました。
「マイク自体に電池を入れたものはインピーダンスが違うので必ずノイズを拾うから止めた方が良い」というのが彼の答でした――!

昔のぼくと違って今は〈プラス思考〉 〜〜 撮り直しとその編集とを毎日繰返しておりますが、「これで更にグレードアップ」と、張り切ってやっております。(笑)


bV2  2003,2.27 兎も角、忙しいのです――!

ここへきてなんだかんだと忙しくなり、 HPの更新が遅れて誠に申し訳けありませんでした。

その主な原因は新作『スーパー・ドキュメンタリー 前衛仙術』にあります。
この作品の公開はゴールデン・ウイークの〈IFF2003〉になると思いますが、その締め切りが2月12日ですのでうかうかしてはいられないのです。

昨日も吉本直聞(映像作家)にきてもらって特殊撮影 〜〜 前日はIF・26期の〈完成講評〉でしたので、帰宅後に居間の天井に物干竿をわたして、それに〈ブルー・バック〉(といっても実際にはオレンジ・バック)を朝方までかけて皺が出ないように張っておきました。

さて、生まれて初めて塗ったドーラン 〜〜、
バックのオレンジ色に顔や頭(禿頭ですので=笑)の色が溶け込んでしまっては拙いからで、その昔『夢走る』で飛脚高橋孝英が使ったドーランを探し出してきて塗ったという次第です。
ともあれ吉本君の技術で巧くゆきました 〜〜 といっても、家のパソコンではその〈合成〉はある程度までしか出来ませんでしたので、彼がその素材を持ち帰って完成させることにします 〜〜 まだその〈合成〉の内容についてはいえませんが、大いに楽しみにしております ――!

ぼくはこれまでソフトを使っての〈特撮〉には余り興味がありませんでした。
いくら頑張ってみてもそれは風化してしまう技術 ―― と思っていたからですが、和田淳子監督作品『ボディドロップアスファルト』を観てからは、使い方によっては面白いのではと思うようになりました。
そこで今回はたった2箇所だけそのソフトによる〈合成〉を試みたというわけですが、その結果は全てが完成してみなければ判りません。

今日はこれからIFに試写を観にゆき、明日はまたIFの〈完成講評〉 〜〜 そしてその後に、2泊3日で予約しておいた万座温泉が控えております。
この忙しい時に温泉旅行はないのですが、半月前から近所の家で改修工事が始まってしまって、その騒音で室内撮影のスケジュールが大幅に狂ってしまっていたというわけなのです。

本来なら撮影はほぼ完了しており、温泉で心身をリフレッシュさせてから細部の調整をと考えていたのですが、なかなか思い通りにはゆきませんね ――。(笑)


bV1 2003,1.15 木村威夫の世界〈夢幻巡礼〉を観て 〜〜 仰天!

先日、川崎市市民ミュージアムで開催中の映画美術監督・木村威夫さんの展覧会へ行ってきました。

木村さんは、あの傑作『ツィゴイネルワイゼン』鈴木清順監督作品’80)を初めとして、手掛けた作品200本の大ベテラン 〜〜 自分の足で収集した膨大な資料を基にきっちりとした考証をしてから美術設計をする巨匠ですが、その一方では実験精神に富み、作品によってその手法をがらりと変えることが出来る、強かでしなやかな美術監督です。

昨年の11月23日から始まって1月19日までの〈夢幻巡礼〉 〜〜 その規模の大きさに仰天しました!

映画美術のデッサンやイメージ画が250点、文学にも造詣が深く小説『眩暈』などの生原稿から、何と本格的に再現された(映画の)幾つかのセット、更に試写室まであって、大きなスクリーンに氏のインタビューが上映されていました。(ここでIFの同僚・村山匡一郎氏(映画研究者)にお会いました!)
そして、土曜、日曜、祝日には、昼と夜の2回にわたって美術監督として関わった映画の上映 〜〜 更にその上に、〈夢幻巡礼 木村威夫自作を語る〉のトークが4回にわたって組まれています ――!

木村さんは従来の美術監督の範疇にはおさまらない自由闊達な御仁で、故・大和屋竺氏などとの脚本家集団・〈具流八郎〉の主要メンバーでもありました。その脚本のほかに、映画評、美術評、エッセイ、小説などと、その活動の場は幅広い分野 〜〜。
ぼくもその恩恵を受けたひとりで、その昔『無人列島』『GOOD−BYE』の映画評を「映画芸術」や「映画評論」などに執筆して貰っていますし、また「月刊・イメージフォーラム」で対談もさせて頂いております。

その人柄と行動力、独特な発想と確かな技術 〜〜 若い映画人に慕われ、現在も美術監督として第一線で活躍中です。
その木村さんの途方もないエネルギーが一堂に集結した〈夢幻巡礼〉 〜〜 1月19日までですので、どうかお見逃しのないように ――!

    川崎市市民ミュージアムHP


bV0 2003,1.7 謹賀新年 〜今年は、体力と気力とを充実させる年〜

あけましておめでとうございます 〜〜 といっても、もう今日は〈七草の節句〉です。

ぼくの住む京王線の高幡不動には、その地名となった真言宗智山派別格本山・高幡不動尊金剛寺があり、今年も初詣に行ってきました。
古来、成田山(千葉県)、大山(神奈川県)とともに関東三不動のひとつに数えられ、お正月は善男善女で溢れます。

このお不動さんと共に知られているのが新撰組の副長・土方歳三の存在 〜〜 その生家や菩提寺は多摩川の支流・淺川の対岸にあります。
来年のNHK大河ドラマはその『新撰組』だそうで、もう街には(新撰組の)隊旗がはためき、店先ではお馴染みの〈新撰組半纏〉が売られています。

さて、もうご存知かと思いますが、ぼくは久々に新作を撮っています。
合成の部分は吉本直聞(映像作家)に手伝ってもらっていますが、あとは全て自分が出て自分が撮るという作品づくりです。

それにしてもデジタル・カメラとパソコンの出現には心底感謝しています。
今度の作品は『スーパー・ドキュメンタリー 前衛仙術』(仮題)で、被写体には雉鳩の営巣などもあり、フィルムでは資金面の他にカメラ・ノイズなど様々な問題があってとても無理でした。

前作の『聖なる劇場』(’98)はハイエイトでしたので、粗編集までは自分でやりましたが仕上げはプロの手(スタジオetc)を借りました。
今度は仕上げも自分ひとりでの作業(といっても最後は吉本君にみてもらおうと思っていますが)ですので、気に入るまでやり直しが可能 〜〜 それだけに撮っては編集の毎日は緊張の連続でもあります。

その為でしょうか、この作品に入ってから萎えていた〈気力〉が甦ってきました ――!
一方〈体力&肉体〉はといえば、衰えた足腰と醜いお腹の脂肪 〜〜 これでは(出演者として)観客に失礼ですので、毎日30分の散歩と6kgのダンベルなどで鍛え、アロエを食し、カボスジュースを飲んで身体を引き締めております。(笑)

その甲斐あってか、75kgもあった体重は69kgまで減少し、体脂肪率も4〜5%は減りました――!
更に今年からは多摩丘陵の頂にあるクワ・ガーデンまで歩いて通い(片道35分)、温泉プールで泳ごうかと思っております。(笑)
ともあれ、〈体力〉がつけば自然と〈気力〉も充実してくる筈ですので、頑張ります――!!

『スーパー・ドキュメンタリー 前衛仙術』のスチール
右の腕(かいな)の筋肉を御覧あれ!(笑)

bU9 2002,12.31 さようなら、2002年――!

2002年も残すはあと1日となりました。

今年は割と忙しい1年で、IF、東京造形大の他に山形国文祭のワークショップ(の講師)が加わり、その上に久々の新作づくり ―― こちらの方は年内に〈ほぼ完成〉の状態にしておきたかったのですがまだ80%どまり 〜〜 何とか1月中にその〈ほぼ完成〉状態に漕ぎ着け、その後はディテールの〈推敲〉を重ねて3月中に完成させようと考えております。

この間、思いもかけない吉事が幾つか重なって、ぼくにとっては頗る良い年となりました。
その第一は、何といっても『無人列島』(’69)『GOOD−BYE』(’71)『王国』(’73) の〈微笑う銀河系〉三部作が東京国立近代美術館フィルムセンターの収蔵となり、〈永久保存〉となったことです。
何せ30年も昔の作品がフットライトを浴びたのですから正に〈作者冥利〉〜〜 スタッフ、キャストを初めとする関係者の皆さんに心から感謝致しております。(他は主に極私的なものですので公には出来ません〜〜笑)

さて、29日は丁度10年目となる〈あばら家忘年会〉 〜〜、
といっても集まるのは大抵2〜3人で、今年もしまだ ゆきやす村上賢司の両君が来宅しました。ふたりは共にIF卒業の映像作家で、〈総合映像格闘技イメージリングス〉の主宰者 〜〜 実験映像などの上映活動にも力を注ぐ御仁たちです。

そのしまだ君ですが、彼はサラリーマンをしながらの〈映像活動〉に限界を感じたとかで、来春には15年間勤めた会社を退社して(映像活動に)専念するそうです。
一方村上君はフリーのディレクターで、劇場作品やVTR作品などを監督していますが、当然のことながら経済的には不安定 〜〜 それでも商業作品と実験映像とに意欲を燃やし続けています。
両君の〈冒険人生〉に先ずは乾杯――!

そのふたりからIF卒業生の近況を聞きました。
中でもカメラマンとして活躍中の白尾一博君と、いま時代劇を監督しているという大西健児君の話に花が咲きました。
その大西君ですが、彼のつくった
『焼星』(’96)『絶頂』(’97)とが何とニューヨーク近代美術館に買い上げられたそうです ――!
『焼星』は父親の葬儀を撮ったドキュメンタリーで、特に
(焼却炉で)遺体が焼かれていくシーンが話題となりました。が、どちらかというと空恐ろしき劇映画・『絶頂』の方にぼくは衝撃を受けました。
ともあれこういう形で大西作品が残されたことを大いに喜んでおります。

いま大晦日のAM4時 ―― いよいよあと20時間で2003年、
  それでは皆様、良いお年をお迎え下さい。


bU8  2002,11.16 フィルムセンターの〈展示会 映画遺産〉

映像作家・かわなか のぶひろさんと映像研究者・村山匡一郎さんから、東京国立近代美術館フィルムセンターの〈展示会 映画遺産〉オープンの話を聞きましたので、先日京橋へ行ってきました。

今年はフィルムセンター(以前はフィルム・ライブラリー) が誕生してから丁度50年目にあたるそうで、その半世紀の間に収集された膨大なコレクションの中から、写真、ポスター、実物の機材、そして映像モニターなどで、映画の歴史が分り易く立体的に展示されていました。

先ず、映画発祥当初からの各映画会社の興亡 〜〜 経営陣や監督など、人材の離合集散の様子を窺うことが出来き、昔観た新藤兼人監督の『ある映画監督の生涯・溝口健二の生涯(’75) のインタビュー ・ シーンが思い出されてきました。

ぼくの出発点は大映東京撮影所の技術部撮影課でしたので、特にカメラなどの機材には関心があります。
そこには、シネマトグラフ・リュミエール(リュミエール兄弟による最古の撮影機材) や、ジガ・ヴェルトフ『カメラを持った男』(’29) で大活躍するパルボ(撮影機)、また五所平之助監督が’32年の発売直後に買ったという8mmカメラと映写機などが工夫を凝らした展示で興味をそそります。

また、日本の実験映像の元祖ともいうべき衣笠貞之助監督の『狂った一頁』(’26)『十字路』(’28) の一部がモニターで見られるようになっていました。
この2作は未見でしたので、それをここで垣間見ることが出来て本当に嬉しくなりました。

『狂った一頁』はぼくが生まれる丁度10年前の作品です。彼のルイス・ブニュエル『アンダルシアの犬』(’28) より2年も早く、この前衛作品が東洋の果て・日本で誕生したのだから凄いです――!
その衣笠監督には大映時代に『お琴と佐助』(’61) のB班につかせて頂きました。その折りには老人とは思えぬそのエネルギーに驚嘆 ―― 〈監督の作品にかける情熱〉を肌で学ばせてもらいました。

貴重なコレクションが一堂に集められた〈展示会 映画遺産〉 〜〜 黒澤 明監督『羅生門』の山門の額とそのビデオによる映像など、興味尽きない展示物が他にもまだまだ沢山あり、近日中にもう一度行こうかと思っています。
訪問者の皆さんも是非どうぞ 〜〜 ※ フィルムセンターのHP


bU7  2002,11.26 『スーパー・ドキュメンタリー 前衛仙術』中間報告・3

前にも触れましたが、只今『前衛仙術』という作品をつくっていて、先日〈仙境シークエンス〉の掉尾を飾る〈収穫祭〉を撮りました。

それまでは自分ひとりが出て、撮影もひとりでやってきましたが、このシーンではぼくの他に妻と彼女の友人・小野塚直美嬢にも出演を依頼しています。
その上に〈ブルー・バック〉を使った特殊撮影もあるのでどうしても助っ人が必要 〜〜 そこで映像作家の吉本直聞君に撮影をお願いしました。

その特殊撮影というのは、家でとれた果物を前にぼくが呪文を唱えると、アケビの中から〈植物の精〉が現れて踊りだすというものです。
その昔、ぼくもCFの仕事で何度か〈ブルー・バック〉の合成をやりましたが、デジタルビデオでは初めてなので経験者の吉本君に頼るしかありません。

その〈ブルー・バック〉ですが、直美嬢の衣装が〈赤とブルー〉だと聞いていたので、それ以外の布をと吉祥寺まで出掛けて探し、既に〈オレンジ色の布〉30メートルを購入してきています。
撮影前日の晩に、それを妻に手伝ってもらって居間の一面いっぱいに張りますが、皺が出ないようにしなければならないのでなかなか大変でした。 巧く張れているようでも良く見ると繋ぎ目がチョッとよれていたりして 〜〜 不安を残したまま就眠 ……。

そして翌日、「なかなか巧く張れましたね、これで問題ないでしょう」と吉本君 〜〜 先ずはホッとします。
ライティングが完了したところで直美嬢が到着し、〈ブルー・バック〉(実際には〈オレンジ・バック〉) を背に踊ってもらいました。
それにしても鍛え上げられた肉体の美 〜〜 そのしなやかなダンスにうっとりさせられました!

我ら夫婦と〈植物の精〉を演じる直美嬢 記念写真 右は吉本君

無事にその日の撮影は終了 〜〜、
一休みしてから、合成部分の素材をPCに取り込んで吉本君が操作を開始します。
手馴れたもので、あっという間に〈アケビの中で踊る植物の精〉の誕生 〜〜 彼もこれほど大掛かりなブルー・バックは初めてだそうで、「予想以上の出来」だといっていました!

さて、訪問者の中には「〈植物の精〉だの、〈合成〉だの 〜〜 おとぎ話でも作っているのか」と訝る御仁もいるかも知れません。(笑)
このシーは特別ですが、全体としてもある意味では〈おとぎ話〉といえるのかも知れません。しかし〈おとぎ話を作っている〉のではなく、あくまでも〈おとぎ話をドキュメント〉しようと企んでいるのです。(と、いってもよくは判らないかも知れませんが……)

まだまだ、手付かずのシークエンスもあるし、ほぼ完成のシークエンスでも大切なショットの撮影が幾つか残っています。またその上に、撮り直さねばならないショットも出てきました。
ともあれ、これまでにない作品をつくろうと奮闘しておりますので、ご期待下さい ――!



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